【主張】GPS捜査 最高裁の判断に疑義あり

 刑事司法の大きな目的は社会の治安と安全、公平性を守ることにある。犯罪は摘発されなくてはならない。不正は正されなければならない。捜査機関には十分な捜査手法が与えられるべきだ。最高裁の判断には、首をかしげざるを得ない。

 裁判所の令状なしに衛星利用測位システム(GPS)を容疑者の車両などに取り付けた捜査の違法性が争われた連続窃盗事件の上告審で、最高裁は「プライバシーを侵害し得る」「公権力による私的領域への侵入を伴う」などとして、「違法」と判断した。

 その上で、現行法で定める「検証許可状」(令状)を用いることには「疑義がある」とし、今後もGPS捜査を行うためには、新たな立法措置を講じることが望ましいと述べた。

 令状がなければGPS捜査はできないが、令状は出せない。GPS捜査はできない、と述べているに等しい。

 判決では、裁判官3人の補足意見として立法には一定の時間を要するため、「ごく限られた重大な犯罪捜査」では「高度の必要性」を要求した上で、令状の発付もあり得ると付け加えられた。

 これも分かりにくい。

 「テロ等準備罪」の新設をめぐる国会審議をみれば、GPS捜査に関わる新法の成立には膨大な時間と労力を伴うことは容易に想像できる。

 その間、事案ごとに犯罪捜査の重大性を各裁判所が個別に判断することが現実的とはいえまい。

 検察や警察はこれまで、GPS捜査を「尾行の補助的手段」と位置付けてきた。

 GPS利用による情報量を捜査員の尾行で得るには、多大な人員と労力を要する。高速道路網の整備などにより、尾行そのものも難しくなっている。

 GPS捜査は特に集団窃盗や、銃器、薬物などの組織犯罪の摘発に有効だとされてきた。テロリスト集団や、暴力団犯罪の捜査についても同様である。2020年の東京五輪を控え、治安対策は待ったなしの急務である。

 最高裁の判断を受け、警察庁は全国の警察に、GPS捜査を控えるよう通達を出した。早くも捜査員らは、その手足をしばられることになる。

 こうした事態を、一体、だれが喜ぶことになるのだろう。

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