【主張】財政健全化目標 規律を緩める理由あるか

 経済再生と財政健全化の両立は、安倍晋三政権が掲げてきた政策運営の基本である。それが揺らぎはじめたのかと、懸念せざるを得ない。

 政府が、国内総生産(GDP)に対する国・地方の債務残高比率を、安定的に引き下げるという、新たな財政再建目標を骨太方針に書いた。

 もともとは、平成32年度までに基礎的財政収支(PB)の黒字化を目指すのが目標だった。これも維持しながら、2つを同時に追求するという。

 債務残高比率は、残高自体が減らなくても経済規模が拡大すれば「改善」を期待できる。PB黒字化を達成した後に用いる目標だったが、成長に伴う税収増で財政再建を図ろうとする首相の意向を踏まえ、前倒しで掲げた。

 ここで懸念されるのは、新たな目標を置いたことにより、PB黒字化で借金依存からの脱却を図る作業が失速しないかだ。

 歳出、歳入両面の改革でPB赤字を地道に減らす努力を怠る一方、経済成長を促す理由で歳出圧力を強める。それは、財政規律が緩むことにほかなるまい。

 PBは、借金に頼らず税金などで政策に使うお金を賄えているかを示す指標だ。32年度の黒字化は国際公約にもなっている。

 だが、その達成は極めて困難だというのが現実の姿だ。政府試算では、高成長を前提に置き、消費税率を10%に上げて税収を増やしたとしても、32年度に8・3兆円の赤字が残るという。

 債務残高比率の方は、先進国のなかでも突出して高い約190%だ。ただ、低金利の効果もあり、経済が再生すれば今後の改善も見込まれる。

 PB黒字化が難しいので、債務残高に目を向ける。そうした安易な発想があるなら問題だ。

 この新目標については、PB黒字化を形骸化させるとの批判や、消費税10%の再々延期への布石といった観測も出ている。PBにこだわるために景気が悪化すれば、かえって財政再建が遠のく、という認識からだろう。

 しかし、歳出拡大で成長を図ろうとしても、期待通りになるとは限らない。そのとき、財政はさらに悪化することになる。

 PB黒字化が難しいなら、追加的な歳出・歳入改革を講じるべきだ。経済再生の不確実さを厳しく認識する必要がある。

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