【産経抄】空飛ぶ車から乗客を守ったバス運転手 6月13日

 「空が光った瞬間、激しい揺れに襲われた。前を走る乗用車が、スッと視界から消えた。あと1秒ブレーキを踏むのが遅かったら」。

 ▼平成7年1月17日早朝、兵庫県西宮市の阪神高速道路で観光バスを運転していた福本良夫さんの証言である。阪神大震災では、高速道路が崩落した。間一髪、転落を免れたバスの映像に、多くの国民が息をのんだものだ。

 ▼対向車線から中央分離帯のガードレールを跳び越えた乗用車は、宙を舞いながら突っ込んできた。観光バスのドライブレコーダーが記録していた、わずか数秒の映像も衝撃的である。10日朝、愛知県新城(しんしろ)市の東名高速道路で、観光バスと乗用車の衝突事故があった。乗用車を運転していた医師は死亡し、バスの乗員乗客は骨折などの傷を負った。

 ▼観光バスの運転手の山本良宗さんは、衝突を避けようとして、直前に左へ急ハンドルを切っていた。このため乗用車はバスの正面ではなく、骨組みのある頑丈な部分にぶつかっていた。山本さんのとっさの判断がなかったら、被害はもっと大きくなっていたかもしれない。

 ▼全重量が約350トンにもなるジャンボジェット機が、どうして空を飛べるのか。誰もが一度は疑問に思ったことだろう。エンジンをかけた飛行機が滑走路を走り始めるとまず、翼に空気が当たる。翼の上側と下側の気圧の差が、飛行機を持ち上げる「揚力」を生み出すらしい。

 ▼では、乗用車が空を飛んだ原因は何か。現場付近の中央分離帯は、真ん中のガードレールに向かって高さ約50センチの法面(のりめん)がある。何らかの理由で制御不能になった乗用車が、猛スピードで乗り上げた。つまり、斜面がジャンプ台の役目を果たしたらしい。にわかには信じられない、メカニズムである。

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