【主張】藤井四段29連勝 勝負の魅力もっと見せて

 「恐らく誰にも破れない」と言われてきた記録を、14歳の中学生棋士が30年ぶりに塗り替えた。驚嘆の一語である。

 デビューから無傷で、歴代トップの29連勝を達成した藤井聡太四段に心から賛辞を贈りたい。

 昨年10月、史上最年少の14歳2カ月でプロ棋士となった。12月に挙げた初勝利から半年での快挙に「喜びとともに非常に驚いています」と謙虚に語った。だが、実力は「すでにトップ10」の声もある。

 タイトル保持者ら実力者との対局も増える。これからも見る人をわくわくさせてほしい。

 将棋界は昨秋以降、ソフトの不正使用疑惑に揺れた。彼の活躍は、そんな暗いムードを一掃した点でも価値があるといえよう。

 関連グッズが品切れとなり、対局の合間に注文する食事が「勝負メシ」として注目される。羽生善治棋聖が平成8年に当時の7大タイトルを全て制覇した「7冠フィーバー」に劣らぬ人気である。

 詰め将棋で培った終盤の強さは、小学生時代から評価が高かったが、プロ入り後は選択肢の多い序・中盤でも「隙がない」と相手をうならせている。

 大記録の背景には人工知能(AI)を搭載した将棋ソフトの急激な進歩がある。

 年配の棋士ほど活用に抵抗感が強いとされるが、平成14年生まれの若者は自然な形でAIの思考法を研究に採用した。これにより、局面の形勢を判断する目は飛躍的に向上したという。

 昨今は先入観を持たずに局面を見るAIによって、定跡が覆されることも多い。指し手が天文学的な数字にのぼる将棋の可能性を、藤井四段には追求してほしい。

 人とソフトが手を組み、新たな可能性を切り開く姿は他の分野にも応用できるはずである。

 羽生棋聖は「結果だけなら、じゃんけんでいい」と語ったことがある。

 勝負事の魅力とは、競い合う人の魅力であり、人に秘められた可能性を追求する姿だ。

 勝負の強さはもちろんのこと、妙手や悪手、奇跡的な逆転などのドラマの中で、若者らしい喜怒哀楽を表現してもらいたい。

 少年の活躍が刺激となり、一人一人が自分の可能性を求め、社会全体が活気づく。それでこそ「藤井フィーバー」の意味が増すというものだろう。

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