【主張】「ハーグ裁定」1年 南シナ海に世界の関心を

 ハーグの仲裁裁判所が、南シナ海で人工島を造成し、軍事拠点化を進める中国の行動が国際法に反するとの裁定を示してから1年がたった。

 だが、中国はこれを無視し、状況の改善は見られない。

 日本など多くの国が経済上、軍事上の海上交通路(シーレーン)とする南シナ海は、アジア太平洋地域の繁栄の基盤である。

 「アジアの地中海」とも呼ばれるこの海は、法の支配が行き届く「平和で自由な海」としておかなければならない。中国が力によってわがものにすることは、許されない。

 国連海洋法条約に基づく裁定により、「九段線」という根拠のないラインで南シナ海の大半は自分のものだと言い張る中国の立場は否定された。

 だが、中国は裁定を紙くずなどと呼び、既成事実を重ねながら国際社会が諦めるのを待っているかのようだ。

 北朝鮮の核・弾道ミサイル開発や中東の問題などに国際社会がより大きな関心を向けているのをよいことに、南シナ海で覇権を握る野心を変えようとしない。

 それは、世界の秩序を支える国際法が無視され、「力による現状変更」がまかり通ることだ。

 放置すれば、米国や日本など自由と民主主義の価値観を共有する国々が作り上げた国際ルールが、恣意(しい)的な「中国のルール」に置き換えられてしまう。

 米国のトランプ政権は7月2日、南シナ海で「航行の自由」作戦を実施した。6日には米空軍の戦略爆撃機が中国が領有を主張する南シナ海の上空を飛行した。

 日本がこうした米国の行動を支持していくのは当然である。

 オーストラリアやインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国、欧州各国に改めてこの問題の重要性を訴え、中国に圧力をかけていくことが必要だ。

 その点、8日の安倍晋三首相と習近平中国国家主席との首脳会談は物足りなかった。東シナ海は論じたが、南シナ海をめぐるやり取りはなかった。あらゆる外交の舞台で、中国のルール違反を容認しないと訴え続けるべきだ。

 仲裁裁判所へ提訴したフィリピンは軍事的、経済的に巨大な中国を前に裁定を「棚上げ」した。フィリピンが中国に取り込まれないよう働きかけを重ねてほしい。

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