【産経抄】市長の手は「真っ黒」 8月9日

 歌人の石川啄木は、26年間の短い人生のなかで、何度も友人知人から借金して踏み倒している。借金の総額は、今の貨幣価値で2千万円にものぼるそうだ。その啄木は、「憲政の神様」と称され、金権政治とも無縁だった尾崎行雄を敬愛してやまなかった。

 ▼「手が白く 且(か)つ大(だい)なりき 非凡なる人といはるる男に会ひしに」。啄木が、東京市長を務めていた尾崎と面会して詠んだ歌といわれている。その伝で行くと、山梨県山梨市の望月清賢(せいき)市長(70)の手は、真っ黒である。

 ▼警視庁捜査2課による逮捕は、小紙のスクープだった。職員採用試験にあたり、特定の受験者の点数を水増しした疑いがもたれている。捜査2課は、望月容疑者と採用された受験者との間の金銭の授受についても調べている。

 ▼今年6月には、知人から現金をだましとったとして、石材会社社長の元妻(61)が逮捕されている。経営が行き詰まっていた会社は、もともと望月容疑者が父親から引き継いだ会社だった。望月容疑者は「人当たりがいい」と評される一方で、市政関係者の間では、多額の借金が話題になっていた。

 ▼全国で多くの市長が、借金に苦しんでいる。といっても市長本人ではなく、あくまで市が抱える借金である。すでに破綻自治体である北海道の夕張市では、鈴木直道市長が約20年かけて353億円の負債を返す再生計画を進めている。

 ▼東京都庁の職員から転じた鈴木市長の給与は、手取りで月額20万円に満たない。さすがに市民から、安すぎるとの声が上がった。ただ鈴木市長は、任期中は今のまま据え置く決意を日経新聞のインタビューで語っている。望月容疑者の給与の額は知らないが、市民としては一円たりとも払いたくない気分だろう。

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