【主張】米国のアジア戦略 TPP離脱の影響大きい

 米国はアジアにどう向き合うのか。トランプ政権はその戦略的な位置付けを明示していない。

 そのために一種の空白状態が生じれば、この地域で懸念されるさまざまな状況の改善が困難になる。極めて深刻な事態とみるべきである。

 さきにフィリピンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の一連の外相会合でも、米国の迫力のなさが印象に残った。

 アジア太平洋地域の安全保障上の喫緊の課題は、北朝鮮の核・弾道ミサイルと南・東シナ海を舞台とする中国の一方的海洋進出だ。これらに対処し、地域における存在感を維持する態度を、米国は鮮明に打ち出してほしい。

 一連の会合では、ASEAN加盟国のほか日米や韓国、中国、ロシアなどの外相が顔をそろえ、2国間、多国間のさまざまな組み合わせで外交が展開された。

 北朝鮮への圧力強化という点で、米外交は一定の成果を挙げた。国連安全保障理事会で北朝鮮産の石炭などの全面禁輸を含む制裁決議採択を主導し、会合では各国にその厳格履行を迫った。

 だが、南シナ海問題で主導権を握ったのは中国だった。中国による南シナ海の軍事化が進行しているのに、ASEAN地域フォーラムの議長声明などで「懸念」の表現は昨年から後退した。

 ティラーソン国務長官がめったに会見を行わず、戦略どころか日常的な外交活動に関する発信も不足している。政権内の人事に手間取り、国務省の態勢も未整備だ。何よりも根本的な要因は、トランプ氏自身の腰が定まっていないことではないか。

 オバマ前大統領は、どれだけ実績を伴ったかは別として、アジア重視のリバランス(再均衡)政策を掲げた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への取り組みでは、新たな地域の貿易ルールを中国には作らせない考えを示し、米国の関与を保証した。

 それに当たることを、トランプ氏はいったいどう考えているのだろうか。

 TPP離脱は、逆コースを歩む象徴となっている。ASEAN諸国などは、大国の出方を注意深く見極めようとしている。米国がビジョンを描けなければ、中国は切り崩しをさらに強めよう。

 同盟国の日本が、米国の積極関与を促す責任は大きい。

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