【主張】北方領土問題 露の暴言を放置するのか

 ロシアにただすべきことを、はっきりとただせたのか。対露外交の姿勢は今のままでよいか。

 安倍晋三首相がプーチン大統領と19回目の首脳会談を行った。成果の有無以前の問題として、大きな疑問を抱く。

 首脳同士が個人的な信頼関係を築き上げる意義は否定しない。だが、それは日本の国益にとり、実質的な成果を伴ってこその話である。

 北方領土の返還そのものについての進展はない。核実験を強行した北朝鮮への圧力強化についても、ロシアを促すことはできなかった。きわめて残念である。

 むしろはっきりしたのは、日本の期待など意に介さず、自らの実利だけを露骨に追求するロシアの姿勢ではないか。

 会談では、北方四島での「共同経済活動」の優先分野として、海産物養殖など5つを決めた。

 この共同経済活動自体が、日本の主権を脅かし、領土返還を困難なものとしかねない。だからこそ、政府は、双方の法的立場を害さない「特別な制度」の下で行うと主張してきたはずだ。

 だが、現実には、日本の主権は無視されたまま、前のめりに共同経済活動が進んでいる。

 ロシア政府が先月、国内法に基づいて北方領土の色丹島への設置を決めた経済特区は、「特別な制度」と明らかに矛盾する。

 極東地域を統括するトルトネフ副首相は、優先5分野について2カ月以内に具体化するよう日本側に求め、その後は、「他の特区同様、ロシアや全世界で投資家を探す」と語ったという。

 恫喝(どうかつ)するかのような発言ではないか。日本固有の領土である北方領土をめぐる暴言に、政府はどこまで抗議しているのか。

 共同経済活動の意義が認められるとすれば、北方四島の返還に向かう道筋を切り開くものであることに限られる。事態が後退するばかりのアプローチなら誤りだ。

 北朝鮮への対処では、日本や米国、韓国などが主張する石油禁輸を含む強い追加制裁について、中国やロシアは拒む構えだ。

 プーチン氏が東方経済フォーラムで「外交手段が唯一の正しい方法」「周辺地域の経済協力に北朝鮮を引き込む必要がある」と述べたことからも明らかだ。両首脳が会談で激しく応酬したもようは伝わってこない。果たして、この信頼関係を国民は支持できるか。

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