【産経抄】国の恥辱とありては 9月27日

 江戸幕府の軍艦「咸臨丸」が太平洋を横断して米サンフランシスコに到着したのは、1860年である。「着くやいなや土地の重立(おもだ)ったる人々は船まで来て祝意を表し、これを歓迎の始めとして、陸上の見物人は黒山の如(ごと)し」。

 ▼乗組員の一人だった福沢諭吉は、市民の熱狂的な歓迎ぶりを『福翁自伝』に記している。諭吉は、建国の父、ワシントンは現地では徳川家康のような存在だと信じていた。ところがその子孫について誰も気にとめていない。「これは不思議」とも回想している。

 ▼日本人が最初に西欧文明に出合ったといえる街である。ここにも、おぞましい慰安婦像が設置された。中国系民間団体が主導したものだ。韓国にある像と違い、背中合わせに立つ女性3人が手をつないでいるデザインらしい。「日本軍に性奴隷にされた数十万人の女性や少女の苦しみの証拠」などと、事実無根の碑文もついている。

 ▼韓国以外では4年前、同じカリフォルニア州のグレンデール市で初めて慰安婦像が建てられた。姉妹都市である大阪府東大阪市に対する裏切り行為である。米国在住の日本人らが撤去を求めて訴訟を起こしたが、今年3月に敗訴が確定した。

 ▼全米有数の大都市に設置されると、影響力ははるかに大きくなる。今年サンフランシスコ市と姉妹都市となって60周年を迎える大阪市としても、黙っていられない。サンフランシスコ市が像の寄贈を受け入れ、公有地に建つことになれば、姉妹都市の関係を解消する。吉村洋文市長は明言した。当然の措置である。

 ▼諭吉は『学問のすすめ』で喝破している。「国の恥辱とありては日本国中の人民一人も残らず命を棄(す)てて国の威光を落とさざるこそ、一国の自由独立と申すべきなり」

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