【主張】衆院解散 現実的な「選択肢」示せ 大衆迎合で危機は乗り切れぬ

 衆院選は政権選択選挙である。各党が日本の進路を決める政策を提示し、議論を戦わせることで成り立つものだ。

 衆院解散の日に野党第一党の「解散」も決まるという、憲政史上でも異例の事態を迎えた。政権の受け皿たり得なかった民進党に代わり、希望の党がその役割を果たすのか否か。大きな焦点が新たに浮上した。

 生き残りをかけて新党に流れ込む議員らには、恥も外聞もない。その是非を含め、有権者の洗礼を受けよう。だが、政権を担おうという集団がいかなる選択肢を持って選挙に臨むのか。ひとえに問われるのはそこである。

 ≪国難への回答避けるな≫

 希望の党は結党から数日しかたっていない。簡単な綱領を示しただけで、政策も定かではない。

 ここまでの「小池劇場」が、今度の衆院選への関心を大いに高めた点は注目したい。だが「しがらみ」からの脱却を訴えて乗り切れるほど、日本の置かれた状況は容易なものではない。

 解散に打って出た安倍晋三首相は、北朝鮮情勢や少子高齢化といった日本の危機を「国難」と位置づけて信を問うている。対する希望の党は、危機克服への答えをまだ持ち合わせていない。他の課題を鮮烈にうたってもいない。

 現状で、希望の党は泥舟の乗客の受け皿になろうとしていることだけが浮き彫りになっている。党代表の小池百合子東京都知事自身、そうした印象を与えるのが得策でないことは承知していよう。ならば、安倍首相の問いから逃げることなく、論じ合うことを求めたい。

 北朝鮮は、核・ミサイルを振りかざし、日米などへの核攻撃の恫喝(どうかつ)をためらわない。多数の日本人を拉致したままだ。防衛相などを務めた小池氏も、詳しい分野のはずだ。

 国際社会が圧力をかけて翻意を促しているが、北朝鮮が従う気配はない。国民を守る方策を語ることは欠かせない。

 もう一つの国難は少子高齢化だ。日本は危機的状況にある。半世紀後には高齢者が総人口の約4割を占め、年間出生数は55万人程度まで落ち込む。

 手をこまねいていれば、人口減少によって国家として成り立たなくなる恐れさえある。

 首相は対策の一環として、高齢者にとどまらない全世代型の社会保障制度の構築を唱え、消費税増税分の使途変更を打ち出している。小池氏が消費増税凍結だけを唱え、具体案を避けていては論戦は深まらない。

 憲法改正の中身を含めて積極的に示し、有権者に判断材料を提供する責任がある。

 希望の党への合流を決めた民進党の前原誠司代表は、政権打倒のため「名を捨てて実をとる決断」だと語った。その「実」に政策は入らないということなのか。

 安全保障関連法や消費税について、民進党と希望の党の間には大きな齟齬(そご)が残っているのに、合流へ動き出している。

 小池氏は「党まるごとの合流」を否定し、憲法改正と安全保障政策の共有を、合流する議員を公認する条件にするという。

 ≪首相指名はだれなのか≫

 希望の党は安保関連法を容認する姿勢だ。選考がおろそかになれば、民進党の看板の掛け替えとの批判は免れまい。

 先発組の細野豪志元環境相らも含め、希望の党で生き残りを図る民進党出身者は、憲法や消費税をめぐる立場の転換について説明責任がある。変節をどう語るかは難問である。だが、そこをうやむやにすれば、希望の党自体への信頼も損なわれよう。

 民進党の最大の支持母体である連合にとっても、希望の党が「原発ゼロ」を打ち出した点を容認するかが問われる。

 原発ゼロや消費増税凍結で、日本を安定的に運営できるだろうか。希望の党の大衆迎合主義(ポピュリズム)的な傾向を危惧せざるを得ない。

 いまだに疑問なのは、希望の党が衆院選後の国会の首相指名選挙で、だれに投票するかである。

 都知事の放り出しは批判を招くことが確実だ。小池氏は辞任して出馬する考えはないとしている。だが、それでは首相指名の候補になれない。その状態で政権交代を唱えることは、議院内閣制の下での政党政治と矛盾しないか。

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