【主張】広がる品質不正 産業界あげて襟をただせ

 素材業界で品質をめぐる不正が相次ぐ中で、経団連の榊原定征会長の出身母体である東レでもデータ改竄(かいざん)が発覚した。

 子会社が自動車用タイヤの補強材の製品データを偽り出荷していた。

 東レ経営陣は不正を1年以上前に把握していたが、「安全性に問題なく、法令違反もない」と勝手に判断して公表しなかった。インターネット上で不正が告発され、ようやく発表したという。

 認識の甘さにあきれるばかりである。仮に安全だとしても、顧客との約束を裏切り、契約で定めた基準に満たない製品を出荷し続けたのである。日本の製造業への信頼をさらに傷つけた。

 とりわけ、自動車の走行を左右するタイヤ部材だけに安全性の早期確認が不可欠である。

 子会社の東レハイブリッドコードがタイヤ補強材の強度データなどを書き換えていた。品質保証の責任者が、自ら主導したというのは悪質このうえない。改竄は昨年まで8年にわたった。

 東レは不正を昨年知り、社長も報告を受けていた。その後、体制を改めたが、他メーカーで品質不正が広がり、榊原会長も批判を強めていた中で、自らは公表を見送っていた。不正の隠匿と批判されても仕方あるまい。

 品質不正の影響は深刻である。関西電力と九州電力は、大飯・玄海原発の再稼働延期をそれぞれ決めた。神戸製鋼所が品質データを改竄したアルミ・銅製品などが原発にも使われ、安全性の確認に時間をかける必要があるからだ。

 とくに関電は、大飯再稼働に合わせて電気料金の再値下げを検討していた。それが延びれば地域経済にも打撃を与えよう。

 素材業界の不透明な商慣習も不正の温床となった。顧客と定めた規格から外れても、合意があれば出荷できる「トクサイ(特別採用)」と呼ばれる取引がある。

 顧客の了解が前提だが、これを悪用して規格外の製品を黙って出荷していた。

 榊原会長は東レを含めて頻発する品質不正を受け、経団連の加盟企業に製品の品質確認を求める方針だ。自ら不祥事の原因解明にあたってほしい。

 産業界も襟をただして社内の総点検を急ぎ、品質管理や法令順守などを徹底すべきだ。真摯(しんし)な取り組み抜きに、製造業の信頼を取り戻すことなどできない。

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