【主張】笹子事故5年 命守るインフラの管理を

 山梨県の中央自動車道笹子トンネルで天井板が崩落し、9人が死亡した事故から5年がたった。惨事を警鐘として橋やトンネルなどインフラの保守点検を義務化する取り組みが進んでいる。

 先月末には、山梨県警が中日本高速道路の当時の社長ら8人を業務上過失致死傷の疑いで書類送検した。インフラをめぐる維持・管理の重要性を改めて認識しなければならない。

 高度成長期に建設されたインフラの老朽化は、全国規模で急速に進んでいるのが現状だ。なかでも地方自治体が管理する道路やトンネルは、改修工事が追いついていない場所が多い。

 国民の生命を守るため、安全性の確保は欠かせない。国も地方が必要な補修工事を実施するための支援を強めるべきだ。

 トンネル事故はコンクリート製の天井板を支えるアンカーボルトが経年劣化で抜け落ち、通行中の車両3台が下敷きになった。だれが巻き込まれてもおかしくない事故で、国民に衝撃を与えた。

 事故を受けて同じような構造のトンネルからコンクリート板が撤去された。政府は道路法を改正し、道路管理者ごとに異なっていた保守点検の基準を統一した。橋やトンネルの管理者には5年ごとの点検が義務づけられた。

 国土交通省によると、この義務化で今年3月末までに点検が実施された橋は全国で約40万、トンネルは5千カ所超にのぼる。それでも点検が済んだのは、全体の半数あまりにすぎない。何よりもまず点検を急がなくてはならない。

 点検を終えた橋やトンネルのうち、2万5千超が「早期の補修が必要」と診断された。だが、実際に補修工事に着手できたのは約3500カ所にとどまる。

 地方の市町村では、インフラの点検や補修に充てる予算にも限りがある。補修できずに通行規制する橋も急増している。

 このため、保守点検や修繕を市町村単位ではなく、周辺自治体が共同で進めることによる効率化も推進すべきだ。インフラを適切に管理してより長く使う「長寿命化」も同時に進めたい。

 それでもなお、人口減少で過疎化が急速に進む地域では、すべての橋やトンネルを維持するのは難しい。住民の理解を得ながら現実に向き合い、集約化や撤去も真剣に考えなければなるまい。

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