【主張】経済再生 脱デフレの好機逃すな 賃上げで回復の実感高めよ

 東京株式市場で日経平均株価が26年ぶりの高値をつけて新年の取引が始まった。足元の景気は戦後2番目に長い回復局面だという。果たして、消費者の財布のひもは緩んでいくだろうか。

 企業や家計に染みついたデフレ心理を払拭し、成長を実感できる力強い経済を実現する。

 長らく指摘されてきたこの課題に、明確な答えを出さなければならない。具体的な行動にさっそく取りかかることが肝要である。

 欧米や中国などの世界経済は同時回復の様相だ。それを追い風に企業は収益を伸ばした。成果を設備投資や賃上げにつなげ、個人消費を喚起する。経済の好循環への機を逃してはなるまい。

 ≪成長基盤固める改革を≫

 安倍晋三政権の役割は引き続き大きい。来年10月には消費税率10%への増税が予定される。デフレ脱却に、これ以上手間取っているわけにはいかない。成長力を底上げする改革を加速すべきだ。

 アベノミクスの5年間で、国内総生産(GDP)は大きく拡大した。円安や株高が進み、企業の利益は過去最高水準である。失業率が2・7%まで低下するなど、雇用環境の改善も著しい。

 それでも多くの国民は、景気の回復を感じ取っていないという。理由の一つは、実質賃金が期待ほど伸びていないことだろう。

 首相は経済界に対し、今年の春闘で3%の賃上げをするよう求めている。3%以上の賃上げをした企業への減税拡大など、税制面でも後押しする。

 業績を伸ばした企業が利益をため込むことへの批判は根強い。経済の活性化には、十分な賃上げが不可欠だというのは、社会的な要請でもある。これに応える前向きな経営判断を期待したい。

 「実感なき景気回復」は、戦後最長の景気拡大期だった平成14~20年にも指摘された。成長が緩やかで、賃上げが低調だった点なども今の状況と重なっている。日本経済は、その後のリーマン・ショックで大きな打撃を受けた。

 翻って今である。海外経済の好調さがいつまでも続くとみるわけにはいくまい。国内の成長基盤を確実に固めておかなければ、海外経済次第で日本の景気が大きく揺らぐ構図から抜けられない。

 この5年間ではっきりしたことは、長期デフレや人口減少の影響により、財やサービスを生み出す日本経済の供給力が小さくなったことだ。だから、景気が上向いた途端に人手不足が顕在化する。

 それを打開するには、生産性を高めて効率よく付加価値を得られる経済への体質改善が必要だ。政府による「生産性革命」の方向性は妥当なものだ。構造転換を促す環境整備を一層進めてほしい。

 ≪金融政策運営は柔軟に≫

 脱デフレを確実にする、もう一押しが焦点となる。内閣府は昨秋、息の長い景気回復で経済全体の需要が供給を上回るなど、脱デフレへの「局面変化」があると指摘した。足元の経済は物価が上昇しやすい状況となっている。

 それでも政府がデフレ脱却を宣言できないのは、デフレに舞い戻る懸念を拭えないからだろう。消費者物価指数の上昇率は0・9%にすぎず、日銀が掲げる2%目標とかけ離れている。

 日銀が直ちに、異例の金融緩和からの「出口戦略」に着手できる状況とはいえまい。

 ただ、日本に限らず欧米でも物価が上がりにくくなっていることに留意すべきだ。販売コストのかからないネット取引の普及で価格が下がりやすくなるなど、構造変化も影響しているのだろう。

 米欧の中央銀行は、2%目標を下回る状況でも利上げや量的緩和の縮小に動いた。いずれは、日銀も柔軟に金融政策を運営することを検討しなければなるまい。

 2%という数字そのものではなく、デフレから完全に脱却できるかどうかである。春闘での賃上げがその前提となる。物価が趨勢(すうせい)的に上昇するかどうかを慎重に見極めなければならない。

 人口減による国内市場の縮小が懸念される日本にとって、海外の経済活力を取り込める経済連携戦略は引き続き重要なものだ。

 トランプ米政権は自国第一の保護主義的な姿勢を改めまい。その間隙(かんげき)を突いて、中国は一帯一路構想による勢力圏を拡大することに余念がない。アジアや欧州との連携強化においても、日本には主導的役割に挑む価値がある。

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