【産経抄】「妹の力」は改革の力となるのか 3月7日

 漫画家の故畑田国男さんは、「姉妹型研究家」の肩書も持っていた。著書の『「妹の力」社会学』のなかで、織田信長とナポレオンという日仏を代表する英雄の違いを妹との関係に見る。

 ▼信長はお市の方を「政略結婚の道具」、あるいは「外交官」として最大限に利用した。一方のナポレオンは、心から愛していた妹のポーリーンを政争の具に使うなど、夢にも思わなかったはずだという。

 ▼北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と妹の金与正(ヨジョン)党中央委員会第1副部長の関係はどうだろう。与正氏は平昌五輪の開会式に合わせて正恩氏の特使として訪韓し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の早期訪朝を要請した。満面の笑みを浮かべて文氏と握手したかと思えば、次の瞬間相手を見下したような表情を見せる。

 ▼故金日成(キム・イルソン)主席直系の孫娘の一挙一動をメディアは報じ、韓国首脳部は腫れ物に触るように応対した。与正氏は少なくとも外交官としては完璧だった。「ほほ笑み外交」が今回訪朝した文氏の特使団と正恩氏の会談をお膳立てしたともいえる。

 ▼与正氏も同席して4時間以上も行われた会談は、正恩氏からすれば「満足な合意」に至った。問題はその中身である。非核化を対話の条件とする米国に、軟化する態度を示した。それでも、南北首脳会談の実施で韓国を取り込み、悲願の核ミサイル開発を進める疑念は消えない。

 ▼たくましくて実行力のある「妹の力」は、人々の古くさい考えを解放してくれる、と畑田さんは期待する。与正氏は父親の故金正日(キム・ジョンイル)総書記から「男なら後継者になっていた」と評されたほど優秀らしい。正恩氏に直言できる、唯一の人物でもある。そんな「妹の力」が、残虐な独裁政権を支えているとすれば、まさしく悲劇である。

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