【主張】児童虐待死 この子を救えなかったか

 親や同居の大人による虐待で死に至る子供が後を絶たないことに、どうにも我慢がならない。

 この子らは、本当に救うことができなかったのか。徹底的に検証し、せめて次の悲劇を防がなくてはならない。

 東京都目黒区の5歳の女児、結愛ちゃんは父親に虐待され、死亡した。「言うことを聞かないので顔面を数回殴った」という父親は、傷害容疑で警視庁に逮捕された。結愛ちゃんの体には古いあざもあり、栄養不足の状態だった。

 父親は、香川県内に住んでいた昨年にも、結愛ちゃんに対する傷害容疑で2度にわたって書類送検されたが、いずれも不起訴処分となっていた。

 県警から通告を受けた県児童相談所は虐待の疑いがある保護者に専門家の指導を義務づける指導措置の行政処分を行ったが、その後に養育環境が改善されたとして、今年1月に解除していた。

 結愛ちゃんらは1月、東京に転居し、香川県の児相から連絡を受けた品川児相が訪問したが、母親に面会を拒否され、結愛ちゃんと接触できないまま、事件は起きてしまった。

 救う機会は、実は何度もあったのだ。児童虐待防止法や児童福祉法の改正で、家庭に強制的に立ち入る手続きが簡略化され、警察官の同行を求められるなど、児相の権限は強化されている。

 だが、その運用に躊躇(ちゅうちょ)があっては、全く意味をなさない。危機意識の欠如が悔やまれる。

 群馬県高崎市では生後2カ月の男児、つぐみちゃんが意識不明の重体となり、母親の内縁の夫が殺人未遂容疑で逮捕された。つぐみちゃんは複数の肋骨(ろっこつ)が折れており古い骨折痕もあったという。

 母親から育児相談を受けていた市や児相は今年1月上旬まで、定期的に家庭を訪問していた。「不審点はなかった」としているが、もう一歩、家庭に踏み込めていれば、虐待を把握できたかもしれない。対応に不備はなかったか、洗い直すべきである。

 警察庁によると、昨年1年間に全国の警察が児相に虐待の疑いがあると通告した子供は初めて6万人を超えた。これが悲しい現実である。児相であれ警察であれ、家庭に立ち入ることは困難を伴う。それでも窮地にある子供を救うための決断が求められる。救える命は救わなくてはならない。

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