【主張】米朝首脳会談へ 完全な非核化は譲れない 拉致被害者の即時解放を迫れ

 米国のトランプ大統領が、北朝鮮の非核化のため、金正恩朝鮮労働党委員長と5月までに会談する意向を表明した。

 金正恩氏が5日の南北会談で、非核化への意思と核・ミサイル実験の凍結を表明し、トランプ氏との早期の会談を求めたことに応じたものである。

 米朝関係に重大な変化が生じようとしている。それを冷静に分析し、最大限活用することによって、北朝鮮核危機を解決に導かなければならない。

 安倍晋三首相は直ちにトランプ氏と電話で協議した。日米の緊密な連携を改めて確認し、首相が4月初旬にも訪米することで合意したのは妥当である。

 ≪事態の楽観は許されぬ≫

 北朝鮮は核戦力の放棄に絶対に応じないと唱えてきた。それが「軍事的脅威の解消」と「体制の安全の保証」という条件付きながら、非核化に触れるようになった。日米など国際社会が制裁などの圧力を科してきた成果にほかならない。

 だが、今後について楽観するのは禁物である。米朝首脳会談に成果は約束されていない。不首尾に終わった場合、危機がより高まるかもしれない。水面下での予備交渉が行き詰まり、会談自体が流れる可能性もないとはいえない。

 北朝鮮は信用できない国である。国際約束を何度も破り、核・ミサイル開発を続けてきた。今も開発を中止すると約束したわけではない。平昌五輪から首脳会談まで利用した融和姿勢は、米本土に対する核攻撃能力を完成させる時間稼ぎとなる。そのリスクも指摘しておきたい。

 南北会談後、北朝鮮の考えをもっぱら韓国政府が代弁しているのもおかしい。北朝鮮の要人から責任ある態度表明はない。

 それでも、困難を乗り越え、外交によって核危機の解決を図る必要がある。そのために、日米韓をはじめとする国際社会が堅持すべき点はいくつもある。

 まず、核危機の解決とは、朝鮮半島の完全な非核化の実現でしかあり得ない。日本国民の安全のため、このゴールは一ミリたりとも動かせない。

 北朝鮮が、米本土向けの核攻撃能力を持たなくても、日本や韓国向けは持つといった、限定された形で核保有国となるのを認める妥協は受け入れられない。

 すでに製造した核兵器を、北朝鮮は国内に隠し持とうとしないか。警戒は怠れない。

 核・ミサイルの「完全、検証可能で不可逆的な放棄」こそが欠かせない。北朝鮮全土に対する随意の査察が、恒久的に実施されることが必要である。

 放棄させるべきは、核兵器とミサイルにとどまらない。北朝鮮に関する国連安全保障理事会決議は、核兵器だけでなく化学・生物兵器や運搬手段である弾道ミサイルの拡散も国際平和に対する脅威だと、再三確認している。

 ≪「最大限の圧力」強化を≫

 査察受け入れを含め、大量破壊兵器である生物・化学兵器の放棄も迫らねばならない。

 この局面で改めて重視すべきなのは、日本には北朝鮮に拉致された被害者を取り戻す最重要課題があるという点である。この解決なしに、制裁解除などに日本が応じることはできない。

 安倍首相はトランプ氏との電話協議で、拉致問題解決のため協力を求め、トランプ氏は「十分よく分かっている」と応じた。

 4月の訪米時にも、北朝鮮との交渉で拉致被害者の即時帰国を実現するよう、首相はトランプ氏に改めて働きかけてもらいたい。

 米朝首脳会談に向けた今こそ、北朝鮮に対する「最大限の圧力」を強化、貫徹していくべきだ。

 北朝鮮には、制裁や軍事力の展開などの圧力しか通じない。こちらが低姿勢をとれば、それを評価して譲歩してくる相手ではない。制裁緩和などの見返りを与えるのは、もってのほかである。

 安倍首相とトランプ氏は電話協議で「北朝鮮が具体的行動をとるまで最大限の圧力をかける」という双方の立場を確認した。その基本姿勢が揺らいではならない。

 それは、完全な非核化が実現するまで維持すべきものである。その一環として、平昌パラリンピックの閉幕後に予定されている米韓合同軍事演習は、必ず実施してもらいたい。それが、対北交渉力を高めることにもつながる。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ