【産経抄】3月10日

 東京都内の公立小学校教諭、黒木公一さんは昨年12月25日の小紙記事を読み、危機感を覚えた。記事は、政府が北朝鮮による拉致問題啓発のため制作し、全国の小中学校や高校に配布しているDVDアニメ「めぐみ」を活用している学校が、わずか7・7%にとどまると報じていた。

 ▼記事はまた、拉致問題への関心が特に若年層で低いことも伝えていた。黒木さんはそこで今年2月、3年生の道徳授業で「めぐみ」を上映することにした。子供たちはすぐに画面にくぎ付けとなり、真剣なまなざしで最後まで引き込まれていた。

 ▼「日本人みんなで助け合えば、めぐみさんは助かったんじゃないかと思った」「めぐみさんのお父さんとお母さんの、この家族の悲しみを、世界中のみなさんに分かってもらいたい」。感想文から、子供たちが拉致問題をしっかり受け止めたことがうかがえる。

 ▼「めぐみ」をめぐっては昨年12月、福岡県行橋市の教育長が学校での上映について、いったん「(在日韓国・朝鮮人への)いじめが起こる懸念を排除できない」と述べ、後に発言を撤回したことがある。行橋市はこれを反省の機会とし、市内すべての公立小中学校(17校)の全クラスで「めぐみ」を上映した。

 ▼制裁と圧力に耐えられなくなったのか。北朝鮮が急転直下、非核化を前提に話し合いを申し出て、トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が5月までに会談する運びになった。北を信用しはしないが、事態が動くのは歓迎したい。

 ▼「拉致問題解決のためにも協力を願いたい」。安倍晋三首相は9日の日米電話首脳会談で改めて要請し、トランプ氏は「十分よく分かっている」と応じた。二人のやりとりは、北朝鮮も注視しているはずである。

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