【主張】原発ゼロ法案 再エネ偏重では国が傾く

 「原発ゼロ基本法案」が立憲民主党などによって国会に提出された。

 国内のすべての原発を廃炉にし、太陽光や風力発電などを増強することでエネルギー転換を目指すという内容だ。

 原子力の安全性は神話であったと決めつけた上での改革案だが、エネルギーの安定供給という一点だけから見ても、非現実的と言わざるを得ないものである。

 福島事故の前、国内には54基の原発があって、安定的に電力の3分の1をまかなっていた。

 立民党などは原発ゼロ化の穴を再生可能エネルギーの増産で埋めようとしているが、さすがにそれだけでは困難と考えたようである。電気の消費量の抑制も同法案に盛り込んだ。

 だが、「廃炉」「再エネ」「省エネ」を、改革の3本柱に据えたこのプランは、大きな無理と矛盾を抱えている。

 まずは、原発放棄を強いられた電力会社の損失の補償と立地地域の雇用の確保などである。法案は国による適切な対処を求めているが、支援の源は税金だ。

 太陽光パネルを所有する富裕層などの痛みは少ないのに対し、一般庶民の負担は、固定価格買い取り制度による電気代の上昇に追加されることで倍加しよう。

 法案は再エネによる電気を2030年までに全体の4割以上にするとしている。つまり残り約6割は、火力発電ということだ。それに加えて、夜や雨天、無風のときには火力発電の出番となる。

 結果として化石燃料輸入費は年額で兆円単位の規模となり、二酸化炭素の削減も進まない。原発の長期停止で現実化している。

 再エネ先進国のイメージが強いドイツだが、電源の主力は火力発電で、劣悪な褐炭火力が多用されている現状を直視すべきだ。ドイツの二酸化炭素の削減にも近年、足踏み感が見えている。

 この基本法案には、さらなる疑問も含まれる。電気のエネルギー源を、原子力以外のものに転換するとしている点だ。

 これでは人類の夢である核融合発電も排除されよう。

 再生可能エネルギーは有用だが、エネルギー源には多様性とバランスが必要だ。日本での原発ゼロは国の土台の基礎杭(くい)を引き抜く暴挙に等しい。資源に乏しい島国であることを顧みず、情緒に任せて棹(さお)さすと国が傾く。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ