【主張】米国の輸入制限 独善極まる発動許されぬ

 国内外の深刻な懸念や批判に耳を貸さず、保護貿易主義へと突き進んだ独善的な決定である。

 トランプ米大統領が、鉄鋼とアルミニウムに高い関税を課す輸入制限の発動を命じる文書に署名した。

 各国との報復の応酬を誘発し、世界貿易はもちろん、米国経済にも悪影響を及ぼしかねない。世界貿易機関(WTO)協定に抵触する恐れもある。どこをとっても、利のない不当な措置である。

 これでは、世界の自由貿易の秩序は瓦解(がかい)する。各国はその認識を共有し、米国に撤回を強く迫らなければならない。

 北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉中であるカナダやメキシコは適用を猶予した。米国有利に運ぶための恫喝(どうかつ)材料としたいのだろう。

 日本を含む同盟国は、協議次第で適用外にする余地を残した。安全保障上の脅威を理由とする輸入制限だが、その根拠がいかに薄弱かを示す証左といえないか。

 日本などに対しては、今回の輸入制限と引き換えに自動車や農業などで一段の市場開放を迫る。そうすることで、輸入した鉄鋼などを使う米産業界の不満も解消できると踏んでいるのなら身勝手にすぎる。

 世耕弘成経済産業相は記者会見で「WTOの枠組みで必要な対応を検討したい」と語った。政府がWTOへの提訴を含む対抗措置を検討すべきは当然である。

 すでに欧州連合(EU)は、米国が措置を発動すれば、WTO提訴や米製品への報復課税などの対抗措置をとると表明している。

 もとより、貿易戦争を激化させたり、長引かせたりするのは望ましくない。それを踏まえて、いかに各国と連携し、効果的に米政権と対峙(たいじ)するのか。その戦略性が問われる局面である。

 折しも、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加する日本などの11カ国が、米国抜きの新協定に署名した。

 トランプ氏は、米国の利益を最大化する修正を前提にTPP復帰を検討する構えだ。その際、鉄鋼の輸入制限も絡めながら譲歩を迫ることは想像に難くない。

 だが、そうした再交渉には応じるべきではない。自国の都合を押しつけようとする「ごね得」を許さないことが、米国の保護主義に対抗する最善の道筋である。

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