【主張】中国とWHO 稚拙な台湾外しをやめよ

 文化大革命中の中国では、失脚した幹部が病気治療すら拒まれ非業の死を遂げた。医療や保健より政治を優先する硬直した発想だが、今の中国も当時とさほど違わないようにみえる。

 今月21日からジュネーブで始まる世界保健機関(WHO)総会に台湾が参加できなくなった。オブザーバー参加を求めていたが、登録期限までにWHO事務局から招待状が届かなかった。

 「一つの中国」をめぐる中国の圧力が背景にある。中国が医療・保健衛生の国際協力を妨げ、WHOがそれに屈する構図は異常そのものだ。

 台湾が締め出されるのは、民進党の蔡英文政権になって2年連続だ。馬英九前政権では2009年から8年連続で台湾のオブザーバー参加が認められた。馬氏の国民党が両岸(中台)関係で中国と歩調を合わせた見返りだ。

 中国外務省の報道官は「招待されないのは民進党当局の責任」と語った。政治対立が妨害の理由と認めたに等しい。共産党独裁の中国と価値観は共有できない。それでも大国と言いたいなら、こうした稚拙な振る舞いはただちにやめるべきだ。

 米政府の出先機関である米国在台協会(AIT)は「米国は台湾がオブザーバーとしてWHO総会に参加することを強く支持する」と表明した。当然のことだ。

 蔡英文氏は20日に総統就任から2年を迎える。台湾海峡の「現状維持」を掲げる蔡氏に中国は圧力で応じてきた。中国軍の空母や爆撃機が台湾周辺で威嚇的な行動を取っている。中米のドミニカ共和国と台湾を断交に追い込んだ。台湾の外交空間は狭まっている。圧力は、蔡氏を北京主導の交渉テーブルに引き込むためだ。

 だが、台湾の行政院大陸委員会は、WHO総会からの排除で、中国に「両岸関係を改善するつもりがないことが明らかになった」と反発した。中国は圧力が逆効果だと悟るべきだ。

 日本では、台湾からの旅行客の発症を発端に沖縄などで「はしか(麻疹)」の感染が広がった。

 新型インフルエンザなどへの備えの重要性を考えれば、国際的な防疫システムから2300万人が暮らす台湾が外されることを日本政府は見過ごしてはならない。医療衛生分野で台湾を支援し、連携を深めてもらいたい。

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