【主張】悪質タックル スポーツ界の常識を疑う

 命にかかわる事故になりかねない、極めて悪質な行為だ。

 学生アメリカンフットボールの名門、日本大の選手が6日に行われた関西学院大との定期戦で、パスを投げ終えた相手チームの選手を背後からのタックルで倒した。

 関学大の選手は無防備の状態でタックルを受けており、腰に全治3週間のけがをした。スポーツとは到底呼べない暴力行為である。スポーツ庁の鈴木大地長官は「レッドカードに値する」と批判したが、傷害で刑事罰が問われてもおかしくない。

 公開された映像を見るかぎり、問題のタックルは相手を傷つけるための行為としか映らない。「これが認められたらスポーツは成り立たない」という関学大の怒りも理解できる。

 看過できないのは、危険なタックルをした選手が、その後も悪質なプレーを続けて退場処分を受けたことだ。チーム上層部の指示も濃厚に疑われている。

 日大は関学大と学生アメフットの歴史をつくってきた。昨年の甲子園ボウルでは関学大を破り、27年ぶり21度目の大学日本一となった。ライバル校への敬意を欠いた今回の暴挙は、名門の伝統も、アメフットの魅力も著しく傷つけるものだと自覚してほしい。

 関東学生連盟は当該選手の対外試合出場を禁じ、日大の試合も当面は中止とした。

 今後、規律委員会で最終的な処罰を検討するという。選手の独断だったのか、チームとしての意思が働いた結果なのか、早急な検証と厳しい対応を求めたい。

 2020年東京五輪の開催が決まり、各競技団体(NF)は強化に加え、選手教育にも力を入れている。しかし、大学スポーツは各運動部の自主的な活動に委ねられており、NFの目が行き届いていない。名門大学の看板を背負った勝利至上主義が、暴走につながった面は否定できない。

 本来はスポーツ庁が指導的役割を果たすべきだが、大学スポーツの統括組織となる日本版NCAAは今年度中に創設される方針で、対応が後手に回っている。

 日本スポーツ界の常識も疑われている。カヌーではライバル選手の飲料に禁止薬物を混ぜる事案があり、他競技でもドーピングなどの不祥事が続いている。

 選手強化より先に、やるべきことがあるはずである。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ