【主張】元教祖ら7人死刑 執行は法治国家の責務だ

 ■終わってはいないオウム事件

 わが国が、死刑制度を有する法治国家である以上、確定死刑囚の刑を執行するのは当然の責務である。法の下の平等を守り、社会の秩序を維持するためにも、これをためらうべきではない。

 地下鉄サリン事件など複数の事件で多くの犠牲者を出した一連のオウム真理教事件で、元教祖の麻原彰晃死刑囚=本名・松本智津夫=ら7人の死刑が執行された。

 上川陽子法相は会見で「極めて凶悪かつ重大な罪を犯した者に対して裁判所が審理を尽くした上で言い渡す判断は尊重すべきだと考える。慎重な検討を重ねた上で執行命令を発した」と述べた。

 ≪後継団体の監視強めよ≫

 刑事訴訟法は「死刑の執行は、法務大臣の命令による」と定め、命令は「判決確定の日から6カ月以内にこれをしなければならない」と定めている。

 「共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない」などの記述もあるが、今年1月、元信者の高橋克也受刑者の無期懲役が最高裁で確定したことにより、一連のオウム裁判は終結した。刑の執行を妨げるものは事実上、なくなっていた。

 平成7年3月20日、朝の通勤時間帯の都心は阿鼻(あび)叫喚のパニックに陥った。官庁街の霞ケ関駅を通る地下鉄3路線にオウム真理教の信者が猛毒のサリンを散布し、13人が死亡し、6000人以上が重軽傷を負った。今も後遺症に苦しむ人が多くいる。

 前年の6月には、長野県松本市でもサリンが散布され、8人が死亡した。一連の事件は、世界で初の化学兵器を使用した凶悪な無差別大量殺人テロであり、国際社会にも大きな衝撃を与えた。

 また、元年11月には、教団に反対の立場を取っていた坂本堤弁護士ら家族3人を横浜市の自宅で殺害し、別々の山中に埋めた。ほかの事件を含め、オウム真理教は13の事件を起こし、死亡者は29人に上った。

 確定判決は、一連の事件の動機を麻原死刑囚が「救済の名の下に日本国を支配して自らその王となることを空想。その妨げになる者をポア(殺害)しようとした」と認定している。

 国家の転覆を図った一連の事件の異常性、残虐性に鑑み、被害者や遺族、家族の処罰感情を考慮すれば、刑の執行を躊躇(ちゅうちょ)する理由は全く見当たらない。

 ただし、元教祖ら幹部信者の死刑執行で、オウム事件を終わらせてはならない。一連の事件の反省が現在に生かされているとは、いい難いからだ。

 オウム真理教は後継団体の「アレフ」、元幹部の上祐史浩代表が設立した「ひかりの輪」、アレフから分裂した集団に分かれて現在も存続している。特にアレフなどは、麻原死刑囚への帰依を鮮明にしているとされ、死刑執行が神格化を強める可能性を恐れる。

 3団体とも「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(団体規制法)」に基づく観察処分の対象であり、不測の事態に備えて監視の目を強化しなくてはならない。

 それ以前に、あれだけの重大事件を連続して起こした教団の後継団体が現存する事実を、社会は許容してよいのか。

 ≪法の整備が欠かせない≫

 一連の事件を受けて政府はオウム真理教に対して破壊活動防止法(破防法)に基づく「解散指定」を請求したが、9年1月、識者からなる公安審査委員会は請求を棄却した。このため後継団体に対する法規制が実施できない事態となり、11年、新たに「団体規制法」が成立した。

 これにより公安調査庁による立ち入り検査などができるようになったが、破防法のような解散命令を出すことはできない。

 あれだけの重大事件を起こした教団の後継団体を解散させることさえできない社会が正常であるとは、到底いえまい。

 オウム真理教は坂本弁護士一家殺害、松本サリンなど数々の事件を重ねて地下鉄サリンに至った。疑いは早くから教団に向けられており、大惨事を防ぐ機会は何度もあったはずだ。

 要因は数多くあるが、最も大きなものは早期の本格捜査を阻んだ根拠法の不備である。法の整備でテロに強い国家に生まれ変わらない限り、オウム事件が終わったとはいえない。

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