【主張】総裁選討論会 「国の舵取り」もっと語れ

 自民党総裁選で、日本記者クラブ主催の討論会などが開かれた。

 安倍晋三首相と石破茂元幹事長が、日本の舵(かじ)取りをめぐって互いに質(ただ)し合ったのはこれが初めてである。

 安倍首相はこれまでの経済運営や外交の実績を掲げ、憲法改正に挑戦する決意を示した。「国難というべき少子高齢化に立ち向かい、教育の無償化を実現する」と語った。石破氏は人口減少が進む日本が社会保障を維持するためにも、アベノミクスを見直して「地方、中小企業、農林水産業」の潜在力を引き出すよう訴えた。

 首相の座を事実上争う総裁選だけに、語るべきテーマは多岐にわたる。限られた時間で全てを取り上げるのは難しい。そうであっても、20日の投開票日までに語ってほしい点は幾つもある。

 2人が避けようのない急激な少子化への対応を重視していることはよく分かる。ただ、解決策を社会保障の改革や今ある地方の活性化にとどめた点は物足りない。

 人口減少や少子高齢化は国民生活のあらゆる場面に及ぶ。社会保障制度や今の地方制度の枠内だけでは対応は難しい。今までのように人々がまばらに暮らすのでは行政、社会保障のサービスのコストを支えきれない。今のうちに地域ごとの拠点に集まって暮らすなど地方の再編は避けられない。コンパクトで質の伴った社会作りの視点がほしい。

 憲法改正をめぐっては、自衛隊明記を優先する首相と、戦力不保持を定めた9条2項の削除が本質であると唱えた石破氏の違いが改めて浮き彫りになった。安全保障環境が厳しさを増す中で、国民投票で自衛隊明記を決めることは意義がある。

 石破氏が参院選の合区解消の改憲を優先し、9条2項削除を急がないとしたのは疑問だ。石破氏が緊急事態条項の創設を急ごうとした点は、安倍首相にも同調してほしかった。

 北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の覇権主義、同盟国にまで厳しい通商交渉を求めるトランプ米大統領との関係について語られなかったのは残念だった。通商や南シナ海をめぐる米中対立は新たな冷戦にいたるかもしれない。国際環境の地殻変動への対応を語るべきだ。安全保障の基盤となる防衛力の整備についても予算規模を含め基本的考え方を説いてほしい。

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