【主張】米銃乱射事件 憎悪と凶器の結合を絶て

 米ペンシルベニア州ピッツバーグのユダヤ教礼拝所で白人の男が銃を乱射し、11人が死亡した。犠牲になったのは、54歳から97歳の敬虔(けいけん)な信者だった。半自動小銃と拳銃3丁で武装した男は「全てのユダヤ人は死ね」と叫んだのだという。

 残忍な言葉には背筋が凍る。人種や宗教が異なる人々への憎悪を増幅させ、結果を最悪に導いているのは、米社会に氾濫する銃器の存在だ。米国の政治家は深刻な事態を直視し、必要な行動をとるべきである。

 男は会員制交流サイトに「反ユダヤ」の投稿を繰り返しており、犯行に使用した4丁を含む21丁もの銃器を合法的に所持していた。あまりに異常ではないか。

 銃乱射は後を絶たない。

 今年2月、フロリダ州の高校で生徒ら17人が殺された事件をきっかけに、若者らのデモも広がったが、米憲法修正第2条の「武器を保有し携行する権利」に阻まれて規制強化の動きは鈍い。

 全米ライフル協会(NRA)から支援を受ける政治家は少なくなく、6日の中間選挙でも銃規制は主要な争点とはなっていない。

 ピッツバーグの事件直後、トランプ大統領は「礼拝所に防衛措置があれば状況は全く違っていたはずだ」との見解を示した。「学校の武装化」を訴えるNRAと歩調を合わせたものと聞こえる。

 米研究機関によると、憎悪犯罪は米国10大都市で、昨年12・5%も増加した。標的とされた頻度は黒人が最も高く、次がユダヤ系であるという。

 不満のはけ口を他者への攻撃に求める排外主義は、経済格差の拡大を背景に根を下ろしている。米メディアや民主党は、トランプ氏の言動が社会の対立を増幅させ、憎悪犯罪を増加させているとの批判を繰り広げている。

 中間選挙で反トランプ票につなげたい政治的な意図があるのは明白だが、トランプ支持層の反発を呼び、かえって米社会の分断を深めるだけである。

 大統領と米国にまず求めたいのは、銃と憎悪犯罪の結合を断ち切ることだ。その上で、多様な民族や宗教への寛容さという本来の価値観を取り戻すことである。

 26年前のハロウィーンでは、米ルイジアナ州で訪問先を間違えただけの日本人留学生が射殺された。銃社会ゆえの悲劇だったが、その反省は全くみられない。

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