【主張】外国人法案 国会の審議に耐えられぬ

 外国人労働者の受け入れ拡大を図るための出入国管理法改正案について政府は2日にも閣議決定を行う。

 法案はこれまで認めてこなかった単純労働を容認し、実質的な永住にも道を開く内容だ。国の形を変え得る政策の大転換であるが、政府は受け入れ規模の見通しや対象職種をどこまで広げるか、肝心の部分さえ明確にしていない。

 来年4月からの実施を目指すというが、なぜそんなに急ぐ必要があるのか。態勢を整えないまま踏み切れば社会に混乱が起き、将来に禍根を残そう。与党にも慎重な意見は多い。この内容では国会審議に耐えられない。

 最も問題なのは対象職種を法律に明記せず、省令などで決定する点だ。裁量次第でどんどん職種が広がりかねない。

 衆院予算委で山下貴司法相は受け入れ人数について「数値として上限は設けない」と述べた。働き手世代が激減していく。将来的に総人口のかなりを外国人が占める状況も想定せざるを得ない。

 目先の労働力不足解消には一定の効果を期待できよう。だが、景気動向などで仕事量は変動する。正社員になれない日本人も多い中、全体の賃金水準が押さえ込まれる方向に進まないか。景気悪化で仕事がなくなっても帰国しない問題などにどう対応するのか。

 社会保障の備えはあるか。安倍晋三首相は参院本会議で「受け入れ拡大に伴い社会保障制度を見直すことは考えていない」と述べた。ただ、健康保険の「扶養家族」には国内居住要件がない。海外に残した外国人家族の医療費まで負担するなど、想定しなかった課題を抱え込むことにもなる。

 新制度は、相当程度の知識や経験を必要とする「特定技能1号」について在留期間を通算5年とし家族の帯同を認めない。だが来日後に結婚や出産する可能性もある。同じ在留資格で家族を持つ人と、帯同を認められない人で不公平感も生まれるだろう。

 法案には、問題や不明点があまりにも多い。移民を受け入れる多くの国が社会の分断や治安の悪化に苦しんでいる現実もある。制度に抜け道やあいまいさを残したまま、「社会実験」を行うようなまねは許されない。

 大規模受け入れに踏み切れば後戻りは難しい。混乱のツケを払わされるのは将来世代である。

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