増税でも減税になる不思議 論説委員・井伊重之

【日曜に書く】

 政治家にとって消費税は鬼門とされる。消費税の導入や増税に挑み、いくつもの内閣が倒れてきた歴史があるからだ。その恐怖は相当なものらしい。小泉純一郎元首相は「聖域なき構造改革」を掲げて国民の高い支持を獲得したが、それでも任期中の消費税増税は封印せざるを得なかった。

 安倍晋三首相が来年10月の消費税増税を表明した。平成26年4月に5%から8%に引き上げた後、2度にわたって延期したが、自らの任期中で2度目となる増税に踏み切る構えだ。所信表明演説では増税による景気の落ち込みを防ぐため、経済対策に政策総動員で取り組む姿勢を強調した。

なりふり構わぬ対策

 政府が検討している対策をみると、なりふり構わぬ感じだ。その最大の目玉が「ポイント還元」である。買い物の際に現金で決済せず、クレジットカードなどで支払うキャッシュレス決済をすれば、次回以降に使えるポイントを付与する内容だ。中小小売店などが販売する商品が対象で、その中には軽減税率で消費税が8%に据え置かれる飲食料品も含まれる。

 日本では現金払いがいまだに主流を占めており、キャッシュレス決済比率は欧米に比べてかなり低い水準にとどまる。経済産業省はキャッシュレス決済の推進を掲げており、中小の小売店などにキャッシュレス化を促すための優遇策としてポイント還元を導入するという。この仕組みでは消費税2%相当分をポイント還元するため、飲食料品の税率は実質で6%となる。増税の影響回避を目的に1年限りの時限的な措置となる見通しだが、「増税すると今より減税になる」という不思議な案である。

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