【主張】世界津波の日 学び伝えたい稲むらの火

 11月5日は「世界津波の日」である。

 日本が主導し142カ国が共同提案国となって2015年12月の国連総会で制定された。

 今年9月にインドネシア・スラウェシ島を襲った地震、津波による死者・行方不明者は3千人を超えた。東日本大震災では津波による犠牲者が1万8千人を超え、インド洋大津波の犠牲者は22万人にものぼる。

 津波の脅威を学び、伝えることの大切さを心に刻み、命を守る行動につなげる決意を世界の人たちと共有する日としたい。

 世界津波の日は、安政元年(1854年)の旧暦11月5日に起きた安政南海地震で、多くの人命を津波から救ったとされる「稲むらの火」の逸話に由来する。

 皇后さまは平成11(1999)年のお誕生日に際し「稲むらの火」について話された。

 「子供のころ教科書に、確か『稲むらの火』と題し津波の際の避難の様子を描いた物語があり、その後長く記憶に残ったことでしたが、津波であれ、洪水であれ、平常の状態が崩れたときの自然の恐ろしさや対処の可能性が、学校教育の中で具体的に教えられた一つの例として思い出されます」

 学び、伝えることの大切さが込められたお言葉に「津波の日」の意義は凝縮されている。

 東日本大震災やインド洋大津波のような巨大津波は頻繁に発生するわけではない。そして、地域や時代にかかわらず津波から命を守る手立ては「避難」しかない。だからこそ、その脅威と教訓を風化させることなく「迷わず逃げる」という意識と行動を次世代に継承することが重要なのだ。

 教科書に掲載された「稲むらの火」の原作は、「TSUNAMI」を世界に紹介したラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「リビング・ゴッド」という英語の小説である。主人公のモデルは私財を投じて復興に取り組み、将来の津波に備えて堤防を築いた。和歌山県広川町に今も残る堤防は、昭和南海地震(1946年)で津波被害の拡大を防いだ。

 今年の「世界津波の日」を前に和歌山県で開かれた高校生サミットでは、48カ国の高校生が「稲むらの火継承宣言」を採択した。

 防災教育、世界への発信、さらに復興や将来に向けた取り組みまで、「稲むらの火」から学び、継承すべきことは多い。

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