【主張】クルーズ客の失踪 「不法入国」を見過ごすな

 クルーズ船で日本に上陸した中国人客が行方をくらます例が急増している。ビザ(査証)なしで入国審査を通過できる制度を悪用したものだ。

 最長で30日間の滞在期間を過ぎれば、不法滞在となる。制度を悪用して日本に入り込んでくること自体が犯罪だ。政府は見過ごしてはならず、出入国管理体制の強化を急ぎ図らなければならない。

 ビザなし入国制度は「船舶観光上陸許可制度」が正式名称だ。クルーズ船を利用する訪日客の入国審査手続きを短縮するため、平成27年1月に導入された。

 それまでの一般上陸許可は、在外公館でのビザ取得と外国人入国記録の提出、指紋と顔写真の提供を必要としていた。

 ビザなし制度によって、訪日客は同じ船で出国することや指紋提供を条件に、ビザや顔写真撮影なしで入国を認められる。1隻当たりの審査時間は、2時間半から1時間20分へと60分以上も短縮された。その分だけ客は観光や買い物に時間を割ける。

 上陸地への経済的な波及効果が期待できるため、観光立国を掲げる安倍晋三政権が導入した。だが、訪日客数の増加を目指すあまり、不法入国・滞在のために悪用されては本末転倒である。

 政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年に訪日外国人旅行者4千万人を目指す。

 法務省によると制度導入後に入国した訪日客は、平成27年が107万人、28年193万人、29年244万人と年々増えている。

 一方で、船に戻らないケースが増えている。多くが中国人客で27年21人、28年36人、29年79人と、わずか2年で約4倍になった。

 昨年4月、中国・上海から福岡・博多港に着いたクルーズ船の中国人男女2人が失踪し、行方不明のままだ。密入国を手引きするブローカーの存在も疑われる。船会社は事前に乗船名簿の確認を行っているが、限界もある。

 訪日客の利便性を図る制度の隙を突かれた格好だ。見通しは甘くなかったのか。東京五輪をひかえ治安上の懸念も募る。

 政府・与党は、外国人労働者の受け入れ拡大をめぐる改正入管法案の今国会成立を目指している。だが、入管体制をしっかり運用できない実態を放置して、新たな制度を論ずるのか。政府と国会の責任は重いというべきである。

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