【主張】南海トラフ地震 土砂災害にも事前避難を

 南海トラフ巨大地震の発生リスクが高まったとされるとき、住民や自治体はどう対応したらいいのか。政府の中央防災会議が大まかな指針となる報告書をまとめた。

 たとえば、静岡県から九州沖に連なる南海トラフの震源域の半分でマグニチュード(M)8級の大地震が発生する「半割れ」のケースでは、残り半分の震源域が連動することを想定し、津波被害の恐れがある地域住民に対し一斉避難を呼びかける。

 報告書が示したのは防災対応の骨組みにすぎない。住民と自治体が主体となって、この骨格に肉付けをし、血を通わせてこそ、命と暮らしを守る対策になる。

 地域の実情に沿って具体的な対応を策定するうえで、最も困難な課題となるのは、厳重警戒と日常生活の両立である。

 報告書では、半割れのケースでの一斉避難の期間を1週間程度としたが、1週間が過ぎてもリスクが高い状況は続く。

 終戦を挟んだ昭和の南海トラフ地震では、東側の半割れ(東南海地震)の2年後に西半分の地震(南海地震)が発生した。安政の東海・南海地震(1854年)は東の半割れの32時間後に西が割れた。歴史的に半割れだけで活動が収束した例はない。

 今日、明日にも大地震が起きるかもしれないが、数年後の可能性もある。その状況で日常生活や企業活動を維持、継続する必要がある。地震防災の基本に立ち返り、前触れなく大地震が起こる「突発」への備えを強化することが最も重要になる。

 揺れに対しては建造物の耐震化、津波には迅速な避難を徹底することが、厳重警戒と日常生活を両立させる大前提である。

 報告書は津波浸水域だけを一斉避難の対象としたが、住民や自治体は土砂災害についても事前避難を検討すべきだ。

 9月の北海道胆振東部地震では、大規模な土砂崩れで多くの犠牲者を出した。

 地震による土砂災害は、揺れてからの避難では間に合わない恐れが、津波以上に大きい。前触れとみられる異常現象が観測された場合に限られるが、土砂災害から住民の命を守る手立てとして、事前避難を見過ごしてはならない。

 山間部の住民、自治体にも「命を守るために何ができるか」を考えてもらいたい。

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