【主張】原発事故から8年 規制の独り歩きは問題だ

 東京電力福島第1原子力発電所の深刻な事故を教訓に安全対策に万全を期すのは当然である。その上で原発の利活用を図るのが、国のエネルギー政策の根幹のはずだ。

 だが、そのための覚悟も行動も一向に示されぬまま、またもや日本の原発の再稼働は足踏み状態に陥ろうとしている。

 安倍晋三政権は、いつまで原発に否定的な世論におもねり、基本政策との矛盾を糊塗(こと)するのか。事故から8年を経た今、現実的かつ冷静に原子力政策を進めるべきときだ。

 昨年は関西電力と九州電力で計4基が再稼働し、営業運転中の原発は計9基に倍増したが、今年中に再稼働が予測される原発はゼロである。加圧水型の多くが再稼働しているのに対し、福島第1と同タイプの沸騰水型で、年内の再稼働を視野に収めている原発が見当たらないからである。

 事故前に54基あった国内原発は福島第2原発の全基廃炉などが正式になれば33基へと退縮する。このままでは国が掲げる2030年度の原子力比率20~22%の確保もおぼつかない。ひいては地球温暖化防止のパリ協定で日本が約束した温室効果ガス26%削減も公約倒れになろう。国の長期エネルギー需給見通しに破綻が生じ、国際的な信頼性にも傷がつく。

 こうした危うさに追い打ちをかけかねないのが、原子力規制庁が現在進めている「震源を特定せず策定する地震動」の検討だ。

 今の検討方向で進めば基準地震動の数値が増大し、再稼働を目指す沸騰水型原発などに課されるハードルは一段と高くなる。高額費用と長期間を要する追加対策も必要になろう。営業運転中の加圧水型も影響を受ける可能性がある。電力事業者の意見は、どこまで反映されるのか。

 規制庁を事務局とする原子力規制委員会は、福島事故を踏まえて7年前の旧民主党政権時代に設置された。独立性の高い三条委員会とはいえ、規制委はあくまでも国の行政の一組織である。規制の独り歩きで国の政策と齟齬(そご)が生じる事態は許されないはずだ。

 原子力行政に望まれるのは、日本が資源小国の島国であるというエネルギー地政学を念頭に置きつつ、安全性を高めた原発の活用に取り組むバランス感覚である。安倍首相には、そのための理性あるリーダーシップを求めたい。

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