【主張】通年採用を拡大へ 学生の資質向上に繋げよ

 大学生の就職活動を協議する経団連と大学の産学協議会が通年採用を拡大する中間報告をまとめた。新卒一括採用に偏った慣行を見直し、卒業後の選考など多様な採用形態への移行を目指す。

 自由な採用活動が広がれば、企業は学業成績や留学経験など幅広い評価基準で学生を選考できるようになる。学生は、新卒時にたとえ就活に失敗しても、専門性を高めたうえで改めて就活に臨むなどの機会が増えよう。

 一方で、企業による優秀な学生の「青田買い」が加速したり、就活期間がかえって長期化したりする恐れもある。混乱を避ける一定のルールも欠かせまい。

 中間報告を受けて、政府は経済界や大学と協議し、3年後の導入に向けた具体的な仕組みづくりを検討する見通しだ。通年採用の拡大を学生の資質向上に繋(つな)げる制度改革にしてもらいたい。

 協議会は新卒一括採用に加え、専門技術を重視した「ジョブ型採用」を含めた複線型の採用方式を導入する方針を示した。一時期に学生を集中選考する現在の就活をめぐっては、授業やゼミが疎(おろそ)かになるほか、就活に出遅れるなどの懸念から留学を敬遠する弊害が指摘されている。

 卒業後も入社試験を受けられるようになれば、専門的な技術や知識を習得したり、留学やボランティアなどの経験を積んだりした学生を獲得できる機会が広がる。企業の期待は大きい。

 ただ、最近の就活は深刻な人手不足を背景に時期の前倒しが進んでいる。通年採用の拡大をきっかけに、優秀な学生を早く囲い込もうとする動きが広がれば、学生が学習や人生経験を積む時間がかえって失われることになる。これでは本末転倒であり、人材育成にも大きなマイナスとなる。

 それだけに、中間報告が「卒業論文や卒業研究の成果を含む学位取得にいたる全体の成果を重視すべきだ」と強調したのは当然である。企業側はそれぞれ明確な採用基準を示し、中途入社組を含めて多様な人材が応募できる環境を整備すべきだ。

 通年採用の拡大は、採用の専門部署を持つ大手企業には有利となるが、人手不足に悩む中小企業にとっては、ますます人材獲得が難しくなる恐れがある。中小企業の採用支援などを含めた制度を設計できるかが問われよう。

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