【主張】札幌の女児衰弱死 子供守る気概がみえない

 同じ悲劇が、何度も繰り返される。反省も気概も感じられない。またも救えたはずの、幼い命が失われた。

 札幌市の2歳女児が衰弱死し、傷害容疑で母親と交際相手の男が逮捕された。女児の体には殴られたあざがあり、体重は約6キロしかなかった。

 自宅周辺では子供の泣き叫ぶ声が昼夜を問わず聞かれていた。近所の主婦が4月、市の児童相談所に通告したが児相は母親と直接接触できず、「子供と一緒に彼氏の家にいる」と電話を受けた後、連絡は途絶えた。

 昨年3月、東京都目黒区で5歳女児が虐待死した事件を受け、政府は、通告から48時間以内に子供の安全確認を行い、できない場合は立ち入り調査を徹底するルールを通知した。「48時間ルール」は無視されたことになる。

 5月中旬には近所からの通報を受けた北海道警が児相に母子との面会に同行を求めたが、児相はこれに応じなかった。当初は当直態勢がないことなどを理由に挙げていたが、後に児相側は「同行は求められていない」と否定した。

 道警は女児のあざを確認したが母親の「転んでつけた」などの説明を受け入れた。児相はこれを基に女児と面会しないまま虐待はないと判断し「信頼できる機関(警察)が確認した。当時の判断は妥当だった」と弁明した。責任転嫁の応酬としか映らない。

 虐待か否かの判断は児相の職責である。面会も果たさず、警察の判断に疑問も持たず、自らの存在理由を否定している。虐待の緊急性評価に使う「リスクアセスメントシート」も未作成で、48時間ルールの無視については「各職員が百数十件の案件を抱え、48時間は非常に厳しい」と言い訳した。

 人手不足は事実である。児相の機能強化に向けて安倍晋三首相は「躊躇(ちゅうちょ)なく一時保護に踏み切れるよう、大幅増員で必要な専門人材を配置する」と述べている。増員は喫緊の課題だが、質を伴わなくては悲劇を止められない。

 目黒の事件後、安倍首相は「痛ましい出来事を繰り返してはならない。やれることは全てやるという強い決意で取り組んでほしい」と強調した。今年1月には千葉県野田市で、学校や児相に父親の虐待を訴えていた小学4年女児が、救われることなく亡くなった。そして札幌の事件だ。首相の檄(げき)は、全く届いていない。

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