【主張】N国党とNHK 公共放送として襟を正せ

 「NHKをぶっ壊す」との連呼が腹に据えかねたのではあるまいが、みなさまの同局とは思えない厳しい物言いだ。

 NHKの木田幸紀放送総局長は定例記者会見で「受信料制度について誤った理解を広める言動にはきちんと対応し、違法行為には厳しく対処したい」などと述べた。

 「NHKから国民を守る党(N国党)」が掲げる受信料を払った人だけが視聴できるようにする「スクランブル化」に否定的な見解を示した上での発言である。

 「厳しく対処」との発言は一般論とは断っていても、参院選で一定の支持を受け議席を得た党の主張を封じるかのようだ。違法行為が許されないのは当然としても「誤った理解を広める言動」とは具体的に何か。かえって自由な発言や議論を萎縮させかねない。

 N国党は比例代表で1議席を獲得した。選挙区で2%以上の得票があり公選法上の政党要件を満たした。放送総局長も会見で「民意として、無視できない数と感じている」と述べた。

 それなら番組の公平・公正性や不祥事が相次ぐ組織体制などに疑念が抱かれ、NHKを見たくない、受信料を払いたくないと思っている人がいる現状こそ真摯(しんし)に受け止め襟を正すのが先だろう。

 N国党の主張にすべて賛成できるわけではない。

 放送に暗号をかけ受信料を払っていない人は見られない「スクランブル化」に対し、放送総局長は「NHKが果たすべき公共的役割や機能を根本から毀損(きそん)する恐れがある」と指摘した。石田真敏総務相も反対の姿勢だ。

 政党などの主張が現実的におかしいなら具体的に論拠を挙げ反論すればいいが、スクランブル化をめぐっては災害報道などを除外し誰でも見られるようにすればいいなど是非の議論もある。

 忘れてならないのは公共放送としての同局の改革が問われていることだ。相次ぐ不祥事の背景に安定した受信料収入に甘えたモラルやコスト意識欠如が指摘されてきた。歴史番組や沖縄の米軍基地などの報道をめぐりバランスを欠いているとの批判も根強い。

 NHK会長が上田良一氏まで4代続け民間から起用されたのも改革が途上だからだ。来年1月に任期満了を迎え次期会長人事の議論も始まる。改革の進捗(しんちょく)はどうなのか明示する良い機会だ。

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