【主張】中国の訪台規制 露骨な選挙介入はやめよ

 中国は台湾への個人旅行を1日から差し止める規制措置を発表した。台湾の観光業に打撃を与える圧力であり憤りを禁じ得ない。

 台湾では来年1月に総統選挙を控える。再選を狙う民主進歩党の蔡英文総統に対し、最大野党の中国国民党も7月末に韓国瑜・高雄市長の擁立を決めた。

 二大政党の候補者が決まった直後の圧力は、中国が「独立派」とみる蔡氏の再選を阻止する選挙介入に他ならない。露骨すぎてあきれるばかりだ。

 中国はかつて軍事威嚇を含むさまざまな方法で台湾の総統選に介入を図ってきた。民主主義への挑戦である。台湾の有権者は毅然(きぜん)とした姿勢を見せてもらいたい。

 まさかとは思うが、中台関係を重視する国民党の韓氏が、この中国の圧力を選挙戦の追い風とすることなどあってはならない。

 中国が狙うのは、蔡氏の追い落としにとどまらず、都合のよい政権の誕生だ。いま問われているのは台湾の尊厳であり、強権の尻馬に乗って票を伸ばすような戦いは論外である。総統選では、これから小政党や無所属の候補者出馬もあろう。堂々たる論戦で台湾の民主主義の力を示してほしい。

 中国から台湾への観光旅行は、国民党の馬英九政権の下で団体旅行の実施から広がった。今回規制されたのは、中国47都市からの個人旅行である。台湾側では総統選後の来年2月ごろまでに約70万人の旅客減を見込んでいる。

 中国からの旅行解禁は、台湾経済が観光収入で中国に依存する状況を招いた。中国にすれば、送り出す観光客を自在に増減させることで相手を揺さぶる手段を手にしたのも同然だ。

 在韓米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備で対中関係の悪化した韓国では、中国でのツアー販売差し止めにより、実質的な経済制裁を被った。

 日本も習近平政権発足前後の関係悪化で中国との交流停止を経験した。「爆買い」の勢いは一時ほどではないにせよ、中国からの訪日客への過度の依存は禁物だ。

 台湾の検疫当局は、アフリカ豚コレラへの警戒から中国の旅客が持ち込む肉類の摘発に忙殺されてきた。むしろ中国の旅客減少を好機として受け流す発想の転換があってよいのではないか。

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