【主張】米国の利下げ 円高圧力への警戒怠るな

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)が10年7カ月ぶりの利下げを決めた。米国はリーマン危機後の非常時対応からいち早く脱して金融引き締めに動いていたが、世界経済の減速に備えて再び緩和方向に舵(かじ)を切った。

 先に欧州中央銀行(ECB)も9月の利下げを示唆し、新興国でも同様の動きがある。日銀は大規模緩和を継続中だ。世界は緩和で足並みをそろえることになった。

 注意したいのは、この潮流が金融市場に及ぼす影響である。米国の金融政策は国際的な資金の流れを左右するからなおさらだ。

 米国の利下げが円高ドル安を招くことがある。急激な円高が日本企業を直撃する事態とならないか。円高圧力が強まるかどうかの警戒を怠ってはならない。

 足元の米経済は堅調だ。それでも利下げに転じたのは米中貿易摩擦と相まって世界経済の鈍化が鮮明になってきたからだ。不確実性に備えた予防的措置であり、パウエル議長は「長期にわたる利下げの始まりではない」と述べた。

 ところが、市場では追加利下げへの期待が後退したとして、直後の株価が急落し、為替相場もむしろ円安ドル高へと動いた。

 輪をかけたのがトランプ大統領の言動だ。「パウエル氏はいつものようにわれわれをがっかりさせた」と批判し、さらなる利下げを求めた。かねてトランプ氏はFRBの政策を非難してきた。今回の利下げも、その圧力があったからという見方がある。自らの言動が金融政策を歪(ゆが)め、効果を減じかねないことを認識すべきである。

 日銀にとっては難しい局面だろう。先の金融政策決定会合では現行緩和策を維持する一方、物価上昇の勢いが損なわれる恐れが高まれば「躊躇(ちゅうちょ)なく、追加的な金融緩和措置を講じる」と明記した。

 緩和が長期化する日銀は米欧と比べると新たな緩和策の余地が少ない。それが市場に手詰まりと見透かされないよう追加緩和に言及せざるを得なかったのだろう。

 もとより、経済が悪化すれば適切な金融政策を機動的に講じるのは当然だ。リーマン危機後の対応が後手に回り、デフレを助長する円高を招いた教訓もある。

 ただ、金融機関の収益悪化など緩和の副作用が大きくなっているのも確かである。追加緩和の是非は、その効果と弊害を見極める冷静な視点で判断すべきである。

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