【主張】香港デモ2カ月 中国の恫喝は火に油注ぐ

 怒りと不信の感情が香港に渦巻いている。これを断ち切らない限り情勢の安定は望めない。

 香港から中国本土への身柄移送を認める逃亡犯条例の改正案に対して撤回を訴える抗議活動が本格化してから約2カ月を経過した。

 5日にはこの問題で初のゼネストが実施され、労組発表で約35万人が参加した。空路の欠航は250便以上に達した。政治活動に距離を置いてきた金融関係者や香港政府の職員まで抗議活動に参加している。

 1997年の香港返還以後、これほど幅広い市民が高度自治の侵害に激しい怒りをぶつけたことはなかった。

 香港や中国の指導者はこの現実を謙虚に受け止めるべきだ。香港政府の林鄭月娥行政長官の対応は無為無策に等しい。長官の資質を疑うが、背後にある中国政府の強硬ぶりが林鄭氏の言動を制約していることは明らかだ。

 中国政府の当局者は激化する街頭での抗議活動を「米国の作品」と呼んだ。外国に責任を押しつけようという陰謀論で、情勢に注視する内外の目を欺けると考えたのなら浅はかである。

 さらに中国は、先鋭化するデモの一部を中国自ら鎮圧に乗り出す可能性を示している。香港駐留の中国軍や、隣接する広東省深セン市に集結した中国警察による暴徒鎮圧訓練の映像が公開された。

 中国当局者は「しかるべき懲罰が必ず下る」と警告した。非常事態を想定した法律の規定があるとはいえ、正規軍の治安出動や中国警察の越境派遣は、香港の「一国二制度」の崩壊につながる。許される選択ではなく、恫喝(どうかつ)は怒りや不信感を増幅させるだけだ。

 30年前、世界は北京の天安門広場で中国民主化の叫びが銃口で封じられる瞬間を目撃した。中国の力による弾圧を再び香港で見ることのないよう、国際社会は中国に強い懸念を伝えるべきだ。

 同時に、先鋭的な実力行動に走る香港の学生らは冷静になってほしい。この数日のデモだけで148人が逮捕された。量刑の重い暴動罪も適用されている。中国の武力介入を招きかねない冒険主義は高度自治の自殺につながる。

 なぜ林鄭氏は改正案の即時撤回を明言できないのか。すでに表明した来年7月の実質廃案が信用されないのは、中国の顔色ばかりを窺(うかが)う同氏への不信と同根だ。

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