【主張】中央省庁の移転 地方活性化に知恵を絞れ

 消費者庁が一部機能を徳島県に移すことを決めた。つまり、全面移転の見送りである。

 安倍晋三政権が掲げる地方創生の目玉と位置づけた中央省庁の地方移転は京都移転が決まった文化庁だけで、消費者庁と総務省がその一部を移すだけにとどまる。

 政府は東京一極集中の是正に向けて中央省庁の地方移転を呼び水に、産業界にも都市部の本社や工場を地方に移すように呼びかけてきた。

 だが中央省庁が「東京を離れれば業務に支障が出る」などと反発し、移転に後ろ向きな姿が浮き彫りとなった。これでは企業の地方移転も進むはずがない。安倍政権が掲げる地方創生も絵に描いた餅になりかねない。

 政府は行政機能の分担などを通じて地方活性化に結びつくよう、もっと知恵を絞るべきだ。

 政府は4年前、中央省庁の地方移転を打ち出し、道府県が政府機関の誘致に名乗りを上げた。この一環で消費者庁は徳島移転の検討を始め、県庁内に事務所を設けて実験を進めてきた。

 だが消費者庁は、国会対応や他省庁との協議などで移転は難しいと判断し、消費者研究などの業務のみを移転させる。

 鳴り物入りで始めた中央省庁移転だったが、地方に移るのは文化庁などの一部にすぎない。他の省庁は国会対応などを理由にして首都圏からの移転は難しいと判断した。そんなことは最初から分かっていただろう。それを踏まえて実効的な地方移転をどう進めるかが問われていたはずだ。

 安倍政権が平成27年度から始めた地方創生では、総額8千億円以上の交付金が投じられた。だが、来年度までに「東京圏と地方の転出入を均衡させる」とした目標は未達に終わりそうだ。最近では逆に、東京集中に拍車がかかる傾向が強まっている。

 7月に政府がまとめた地方創生の新たな基本方針では、大都市の住民が週末などに限定して地方で過ごす「関係人口」の拡大を打ち出した。東京集中に歯止めがかからない中での苦肉の策だが、省庁が範を示す施策はもう断念してしまうのか。

 地方も、国からの支援ばかりに期待するようでは困る。もっと主体的に活性化の課題に取り組み、そこで得られた知見を地方から全国に広げてほしい。

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