【主張】米中貿易協議 「改革」迫る手を緩めるな

 米国と中国が、あらゆる物品に関税をかけ合う貿易戦争の泥沼化は、ひとまず回避された。

 米中貿易協議が「第1段階」の合意に達し、米国は15日に予定していた新たな制裁関税の発動を見送った。発動済みの一部関税も引き下げる。

 摩擦激化は、米中のみならず世界経済を停滞させる多大なリスクをはらむ。そこに歯止めがかけられたのはよかった。景況感が悪化してきた日本経済にとっても朗報である。

 ただ、肝心な点が先送りされたのは残念でならない。国営企業に対する巨額補助金など、中国共産党による経済支配の根幹をなす構造問題への切り込みである。

 米国が、もっぱら中国による農産品の大量購入を成果としたいのなら、何のために世界経済をリスクにさらしてまで貿易戦争を仕掛けたのかが分からなくなる。

 重要なのは「第2段階」の協議だ。トランプ大統領は目先の実利にとらわれることなく、中国の覇権主義的な振る舞いに腰を据えて対峙(たいじ)しなければならない。

 米国を合意に向かわせたのは来秋の大統領選に向けて目に見える成果を欲していたからだ。摩擦で農産物の対中輸出が大幅に減っており、支持基盤の農家が離反しないよう手を打つ必要があった。

 米国が15日に予定していた追加関税はスマートフォンやノートパソコンなどの消費者向け製品が多く、大統領選を前に国内消費が冷え込むことへの懸念もあった。

 一方、景気減速に直面し、消耗戦を是が非でも避けたかった中国にとっても合意の意味は大きいだろう。覇権を支える製造強国となるためにも、国営企業中心に産業を手厚く保護する路線の転換は認められない。そこを脇に置いて一部制裁を緩和できたからだ。

 中国はもともと、貿易赤字の縮小にこだわるトランプ氏への交渉カードとして農産品購入を検討してきた。合意には知的財産権保護や技術移転の強要是正などもあるが、中国は従来、これらの問題に対処する姿勢をみせていた。

 米国には、合意を口約束とする隙を与えないよう詳細を詰めた上で署名に臨んでもらいたい。

 米政権がいたずらに経済を混乱させないよう目を配るべきは当然である。それと同時に中国の強権的な動きを確実に封じる。その責務をいかに果たすかが問われていることを忘れてはならない。

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