【主張】露の漁船拿捕 外相は乗組員を取り戻せ

 北方領土の歯舞群島付近で操業していた日本の漁船5隻がロシア国境警備当局に拿捕(だほ)された。茂木敏充外相による初の訪露に合わせたような挑発的行動である。

 茂木外相は19日に予定される日露外相会談でこの問題をまず取り上げ、乗組員24人を連れ帰るとの気迫で即時解放を求めねばならない。

 択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の北方四島は日本固有の領土であり、先の大戦後からソ連・ロシアが不法占拠している。拿捕された5隻は、1998年の日露協定に基づく安全操業の枠内でタコ漁をしていた。

 協定は、日本漁船が北方四島海域で、ロシアの臨検や拿捕を恐れずに安心して操業できるようにした取り決めである。日本側は資源保護の協力費などを払い、漁獲量や漁期に関する毎年の合意を経て操業している。

 協定に基づく活動は日露両政府の「立場や見解」を害さないと明記されており、ロシアの領土や領海に関する主張は認めていない。ロシアが漁船の取り締まりを行うとの規定もない。

 それにもかかわらず、ロシア側が「違反操業」を名目に、日本漁船に公権力を行使する事例が後を絶たない。2006年8月には、歯舞群島海域で日本のカニかご漁船「第31吉進丸」が露国境警備艇の銃撃を受け、死者も出た。

 懸念されるのは、安倍晋三首相がロシアと、北方領土での共同経済活動を進めようとしていることである。首相は、これが領土問題解決に資すると考えているようだが、その論理は理解に苦しむ。

 共同経済活動は、漁業協定やビザなし渡航と同様、北方領土の主権問題を棚上げにし、「特別な制度」で人の移動や経済活動を可能にしようとするものだ。漁業に関する合意をロシアが反故(ほご)にしている現状で、より複雑な陸上の共同経済活動をどう行うのか。

 日露首脳は16年、領土問題に関する立場を害さない形で共同経済活動を行うと合意した。ロシアがその後に自国法制の適用を訴え、協議は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。

 安倍政権は「四島返還」や「不法占拠」という表現を封印しているが、ロシアは北方領土の軍事拠点化に邁進(まいしん)するなど増長する一方だ。配慮や弥縫(びほう)策ではなく、毅然(きぜん)と北方四島の返還を要求する本道に立ち返らなければならない。

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