【主張】伊方原発停止 高裁の迷走が止まらない

 司法の見識が疑われる決定である。

 広島高裁が仮処分で四国電力・伊方原子力発電所3号機(愛媛県)の運転停止を命じた。

 伊方3号機に関する広島高裁の仮処分の判断は、この約2年のうちに運転が1回、停止が2回となった。裁判長が異なるとはいえ、高裁としての定見の欠如ぶりは、看過できない迷走状態だ。

 伊方3号機は、福島事故で国内の全原発が停止した後、平成28年夏に国内で4番目に再稼働を果たした原発である。

 昨年12月から定期検査中の3号機は、4月からの運転再開を予定していたが、仮処分は即時に効力を発揮するため、効力が期限付きとはいえ、停止継続を余儀なくされる見通しだ。

 停止による電力不足分の穴埋めは、火力発電で行われるため、二酸化炭素の排出増と併せて、電気代の値上がりが消費者に及ぶ事態は避けがたい。

 広島高裁による前回の運転差し止めは、29年12月に下されたが、その際は阿蘇山の巨大噴火が理由だった。火砕流が海を渡って伊方原発に到達する可能性が否定できない、というものだった。

 今回の運転差し止め理由は、伊方原発が立地する佐田岬半島沿いの断層と原発までの距離だ。

 伊方3号機は原子力規制委員会の厳格な安全審査に合格して再稼働を果たした原発である。

 にもかかわらず、裁判長は四国電力の主張よりも近くに断層が位置すると解釈し、3号機を合格させた「規制委の判断には、その過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」とした。

 阿蘇山からの火砕流については、ゼロリスクを理由に伊方原発を立地不適とするのは社会通念に反する、と良識を示したものの、火山灰などの降下量に関して規制委にかみついた。

 四国電力の想定は過小で、それを認めた「規制委の判断も不合理である」としたのだ。

 高度に専門的な理学、工学知識が求められる原発訴訟での大胆極まる「決定」だ。審尋は、たったの1回だったからである。

 しかも裁判長は今月25日に退官する。近年の原発訴訟で運転停止を命じる決定が定年退職が近い裁判長から出される傾向は偶然か。仮処分が脱原発の闘争手段になりつつあることも気にかかる。

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