【主張】日本型雇用の改革 待遇下げる口実にするな

 経団連が、今春闘で経営側の交渉指針となる経営労働政策特別委員会(経労委)報告をまとめた。全体の賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)を7年連続で容認する姿勢を示した。

 注目されるのは、年功賃金などを柱とする日本型雇用慣行の変革を求めたことである。一律の賃上げを排し、職務を明確にして成果に応じた賃金を支払う仕組みなどを提言した。

 中西宏明経団連会長(日立製作所会長)は新卒一括採用の見直しも主導しており、経団連は今春闘を労使で日本型雇用慣行を改革する契機に位置づける構えだ。

 企業が持続的に成長するには雇用制度の改革が欠かせない。成長がなければ賃上げ原資の確保も難しい。硬直的な雇用慣行を見直すのは理解できる。

 しかし、そうした改革を従業員の待遇を切り下げるリストラの口実にしてはならない。労使は短時間正社員など多様な働き方を認めつつ、組織の活性化につながる雇用改革に取り組んでほしい。

 経労委報告では、新卒一括採用と年功賃金、終身雇用を柱とする日本型の雇用システムが「転換期を迎えている」と指摘し、専門的な職務の成果などに応じて評価する「ジョブ型雇用」を広げるべきだと訴えた。

 長く勤務するほど賃金が上がる年功賃金の下では、優秀な人材を中途採用して高い給料を支払うことが難しい。日本の労働生産性は主要先進国の中でも低く、生産性向上は大きな課題だ。職務を明確化して成果で報酬を決める雇用体系への移行が求められる。

 ただ、春闘交渉がそうした改革論議に埋もれ、肝心の賃上げが不十分になるようでは問題だ。今回の報告で経団連は「賃上げの勢いは維持されている」と強調している。支払い能力のある企業は、ベアを含めた賃上げで従業員にきちんと報いるべきだ。

 企業が雇用慣行を見直す場合には、賃金などの人件費総額を減らさないなどの原則を労使で確認する必要がある。その上で、職務の成果で配分を決めるなどの取り組みが重要だ。そうした原則を抜きにジョブ型雇用などを拡大すれば、従業員の待遇が一律で引き下げられる恐れもある。

 こうした見直しには労使合意が欠かせない。時間をかけて継続的に協議する仕組みも考えたい。

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