【主張】プーチン政権 身勝手改憲は看過できぬ

 ロシアのプーチン大統領が唐突な憲法改定に乗り出した。2024年に大統領任期が切れる後も実権を保持するため、権力機構を変更する意図が明らかである。

 身勝手な改憲には代償が伴うことをプーチン氏は理解すべきだ。

 プーチン氏が下院に提出した改憲法案には、国際機関の決定が憲法に矛盾する場合、ロシアはそれを履行しないとする条文がある。国際社会には看過できない内容だ。

 たとえば、ロシアは自国の人権侵害について、欧州人権裁判所から多数の敗訴判決を受けている。改憲が成立した場合、ロシアは国内の原告に対する賠償金支払いなどを拒絶する恐れがある。

 中国は2016年、南シナ海での行動をめぐって仲裁裁判所から敗訴の裁定を受けながら無視している。ロシアはこうした行動を憲法で正当化しようとしているのだから質(たち)が悪い。国際機関には条約に基づいて加盟しているのであり、不都合な決定に従わないのはあまりに恣意(しい)的である。

 プーチン政権は2014年、国際法や条約を無視してクリミア半島を併合し、米欧に経済制裁を科された。国際法や条約を軽視する傾向が強まれば、日本の北方領土交渉にも悪影響が大きい。

 改憲案の柱は、首相を決める権限を大統領から下院に移すなど、大統領職権の一部を分散させることだ。後任大統領の力を弱め、自らの統制が効くようにしておく意図が透けてみえる。

 地方知事らで構成される形式的な機関、国家評議会を初めて憲法で明文化し、内外政策の基本方針を決める権限も持たせる。プーチン氏が大統領退任後、評議会のトップとして権力への居座りを図る可能性が指摘されている。

 プーチン氏は、改憲提案と合わせて内閣を交代させた。自らの求心力を維持した状態で権力機構を変えるため、ミシュスチン新首相に経済再生を委ねた。

 しかし露経済の不調は、プーチン氏が約20年をかけて構築した国家資本主義的な体制と、米欧との関係悪化の帰結である。プーチン氏が実権を保持する限り、ロシア経済は劇的には好転せず、国民の不満は蓄積し続けるだろう。

 改憲案は翼賛体制の議会で容易に承認される見通しだが、国民不在の改憲は、ロシア自身に決して良い結果をもたらすまい。

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