【主張】新型肺炎 中国全土の邦人対応急げ

 中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続いている。

 安倍晋三首相は新型肺炎を「指定感染症」に28日の閣議で指定すると表明した。患者に入院や就業制限などの強制措置をとれるようになる。

 日本政府はチャーター機を武漢市へ飛ばし、希望する邦人全員を帰国させる。在中国の日本大使館は武漢市のある湖北省に滞在中の邦人に連絡と意向確認を進めている。

 中国政府は、湖北省のほぼ全域に移動制限をかけた。同省では外国人を含む約6千万人が「封鎖都市」に足留めされている。日本政府が邦人を帰国させるのは当然で、遅すぎるくらいだ。

 連絡がつかないなどやむを得ない理由により一度の便で帰国できない人が出てくれば、チャーター機や政府専用機をさらに派遣することも想定すべきである。

 邦人の帰国のためだが、事情が許せば同盟国米国や友好国の国民を乗せることはあってよい。イラン・イラク戦争当時の1985年にはテヘランからの邦人脱出にトルコ航空機が当たってくれた。

 武漢で医療品の不足が伝えられる。チャーター機などを使い医療物資を運ぶ支援は重要だ。

 日本の政府や企業は湖北省以外に在留する邦人への対応も急ぐ必要がある。中国全土には企業の駐在員や家族、留学生など約12万人の邦人がいるとされる。

 湖北省以外の中国各地でも感染者が出ている。武漢のような事態にならないことを期待するが、万一に備え、情報提供の強化や邦人の自主的な帰国が必要ではないのか。それには企業の協力が欠かせない。

 中国政府は全土からの国外への団体旅行を禁止した。春節の期間が終わると、在中国の日本大使館や総領事館でのビザ申請の受け付けが再開されるはずだが、日本政府は個人旅行者へのビザ発給の扱いをどうするか方針を決めなければならない。

 世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言見送りが影響したのかもしれないが、日本政府の「指定感染症」の決断は遅かった。日本が今回の事態に決然と対処するためにも28日の定例閣議を待たず、臨時閣議や持ち回り閣議での速やかな決定が望ましかった。死者の数は急激に増えており、後手に回らない対応をすべきである。

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