【主張】高年齢者雇用 職務に応じた待遇整備を

 政府が、70歳までの就業機会の確保を企業に求めた高年齢者雇用安定法改正案などの関連法案を閣議決定した。

 「人生100年時代」を見据え、意欲のある人が長く働ける環境を整備するのが狙いだ。

 現行法は企業に65歳までの雇用確保を義務付けている。60歳定年の廃止や延長、再雇用の中から企業が選ぶ仕組みだ。これをフリーランス契約や起業支援などにも拡大し、多様な働き方の提供を促す。

 ただ、自営業者として企業と契約するフリーランスは、保証があいまいな不安定な雇用だ。高齢者が企業側から一方的に不利な条件を強いられることがないようにしなければならない。

 少子高齢化が加速する中で高齢者も貴重な労働力であり、社会保障制度の支え手でもある。職務を明確化し、その成果や専門性などに応じて処遇するなどの透明性ある制度設計が問われている。

 政府は高年齢者雇用安定法や雇用保険法、労働基準法など6本の関連改正案を束ねて今国会へ提出する。70歳までの就業機会の確保は、企業の努力義務として来年4月の施行を目指す。

 厚生労働省によると、70歳以上でも働ける制度を持つ企業は全体の約3割にとどまる。高齢化の進展を背景に65歳を超えても働きたい人が増える中で、産業界の取り組みは遅れているのが現状だ。今回の関連法案を契機として企業には積極的な対応を求めたい。

 だが、日本では新卒一括採用や年功賃金などの雇用慣行が根強く残る。一定の年齢まで給料が上がる仕組みの下では、高齢者雇用の拡大で現役世代の賃金が低く抑えられる恐れもある。職務や成果などに応じて賃金を支払うには、人事評価制度の整備が重要だ。

 70歳までの就業機会の確保を前提にフリーランス契約に移行したり、社内で起業したりする場合、労使で雇用条件を協議するなど何らかの保護策も検討すべきだ。企業が現役世代の従業員の待遇を引き下げるため、悪用するのを防ぐ歯止めも不可欠だ。

 政府は今回の措置を努力義務とするが、将来的には義務化も検討する。心身ともに健康な人がいつまでも元気で働ける職場が増えていけば、先進国の中でも低い労働生産性の向上も期待できる。そうした環境整備は企業にとっても基盤強化につながる。

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