【主張】クルーズ船足留め 政府は態勢の立て直しを

 新型コロナウイルスによる肺炎をめぐる水際対策は、なお後手に回っている感が拭えない。臨機応変の措置が必要だ。

 町のような規模のクルーズ船は感染症に脆弱(ぜいじゃく)だった。横浜港で検疫中の大型クルーズ船では足留めされた乗船者の感染者数が増え続けている。

 今回のクルーズ船でのウイルス検査を症状のある人や濃厚接触者に限ったのは疑問だ。乗客乗員は3711人だが日を重ねれば全員検査はできるはずだ。

 武漢からのチャーター便帰国者は全員検査である。「武漢発」ではないが感染が出た船も同様であるべきだろう。検査は食事など乗客を世話する乗員から始め、全員に及ぶべきだ。船内で新たな感染が発生すれば経過観察をさらに延ばすことにもなりかねない。

 水際対策は厳格であることが望ましい。宿泊施設での経過観察は足留めされた人に負担がかかるが中途半端に帰宅させれば風評被害の恐れもある。政府が、チャーター便で帰国し経過観察中の人々のうち11人を自宅などへ戻したのはちぐはぐな対応である。「やむを得ない事情」というだけでは理解することは難しい。

 経過観察は不可欠だが、一時的にデッキに出られるにしてもクルーズ船の窓のない部屋などに14日間も滞在するよう求めて大丈夫なのかという問題はある。高齢者や持病がある人を船外施設に移さなくていいのか。

 加藤勝信厚生労働相は7日、上陸許可前であることから今回のクルーズ船での感染を国内感染数に集計せず、世界保健機関(WHO)に報告したことを明らかにした。感染数を抑えたいのかもしれないが、数にかまけるよりも水際対策に力を注ぐべきだ。

 発症疑いがある香港発の別のクルーズ船について、政府が乗船外国人の入国拒否を決めたのは妥当だが、乗船日本人の帰国支援に努めてほしい。1~4便のチャーター機で希望者の大部分が帰国できたのはよかったが、現地に救いを待つ日本人がまだいる。第5便もためらうべきではない。

 自民、公明各党は検査・治療態勢の整備や政府の対策部局の格上げなどの提言を安倍晋三首相に提出した。政府は来週にも緊急対策を策定する。水際対策や検査・治療態勢の強化、経済への対応など政府は思い切った対策をまとめ、態勢を立て直してもらいたい。

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