【主張】札幌五輪招致 未来に何を残すのか語れ

 2030(令和12)年冬季五輪の招致に、札幌市が乗り出した。

 東京五輪と25年の大阪・関西万博に続き、北海道で祭典の開催が決まれば、日本は向こう10年、壮大な夢とともに歩むことができる。

 地方創生という課題への挑戦でもある。1972年以来となる2度目の五輪が社会や経済、文化にどんな遺産を残すのか。北海道胆振東部地震で傷ついた被災地の再生に、どうつなげるのか。札幌市には五輪後の将来像を含めた開催計画を示してもらいたい。

 開催地は来年にも決まる可能性がある。国際オリンピック委員会(IOC)が「原則7年前」とした規定を撤廃したからだ。複数の国・地域や都市との共催も認めるなど開催要件も緩和した。

 冬季五輪は「厄介者」と呼ばれるようになって久しい。冬季競技の盛んな欧州でさえ、近年は住民投票で招致を否決する都市も少なくない。五輪の受け入れ先を探すのは、それほど難しい時代だ。

 札幌は地震からの復興を優先させ、2026年招致を断念したが、東京五輪ではマラソン・競歩の開催を引き受けた。IOCは札幌を高く買っており、30年大会の招致過程は、札幌ありきの「形づくり」という観測もある。

 だからこそ、札幌には冬季五輪のあるべき姿を語ってほしい。26年招致で約4500億円と見積もった開催経費の見直しも必要だろう。削減の努力だけでなく、社会状況に応じて上振れするリスクも正直に示すべきだ。

 温暖化が進む中、環境への負荷をどう下げるかも問われる。高度経済成長期の余勢を駆った前回の札幌五輪とは状況が違う。求められているのは、将来も持続できる冬季五輪のモデルだ。

 スポーツ界も、国にもたれかかる体質からの転換を迫られている。選手強化費の大半を国費でまかなう現状は、競技団体を束ねる日本オリンピック委員会(JOC)の掲げた「自主・自立」にほど遠い。いつまでも五輪景気を当て込む姿勢では、国民の共感は得られない。

 なぜ再び五輪を開くのか。五輪後に何を残すのか。札幌と日本のスポーツ界には、日本や世界を視野に入れた将来の展望を示す責任がある。その上で、札幌が五輪を成功させ、国際観光都市として飛躍する姿を見たい。

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