【主張】イベント制限維持 混乱招かぬ政策の説明を

 ブレーキを踏みながらアクセルも吹かす。その必要性は理解できるが、車内の乗り心地はすこぶる悪い。これを軽減するには、丁寧で徹底した説明が適宜なされることが必要だ。

 政府は22日、新型コロナウイルス感染症対策分科会の議論を経て、プロスポーツやイベントの人数を5千人までとする制限を8月末まで維持すると決めた。

 東京をはじめとする全国で感染が拡大していることを受けた措置だ。当初は8月1日から、5千人の上限を撤廃する予定だった。

 だがサッカーのJリーグは政府の判断を待たず、20日の臨時実行委員会で観客数の上限引き上げの見送りを決めていた。プロ野球も5千人の入場制限を継続することを事実上決めており、西武と楽天はこの方針を発表していた。

 事態は動いている。予定の変更は臨機応変であるべきだが、政府の決定は、いかにも遅く映る。

 加えて分かりにくいのは、同じ22日から政府の観光支援事業「Go To トラベル」を東京の発着を除いてスタートさせたことだ。制限の継続と緩和の促進という正反対の政治判断を国民はどのようなメッセージとして受け止めればいいのか。迷って当然だ。

 安倍晋三首相は22日の対策本部会合で「ウィズコロナの時代にあって効果的な感染防止策を講じながら社会経済活動を段階的に回復させ、両立を図る」と述べた。

 必要な政策であり、経済の疲弊も事実である。だが感染の拡大がこのまま続き、再び緊急事態宣言を発令する事態を招けば、それこそ経済や社会生活は致命的な打撃を受ける。

 東京都では23日、新たに過去最多の366人の感染者が報告された。感染への不安を抱いたままでは本格的な経済活動の回復も望めない。その上で経済の促進事業を進めるためには国民の不安を除去する説明が必要だ。

 例えば、菅義偉官房長官は「Go To」について「感染リスクが高い若者や高齢者の団体旅行は利用を控えるよう呼び掛けるなど対策を講じている」と述べた。これでは不十分である。若者や高齢者に定義がなく団体の規模もあいまいだ。

 イベント観客の制限継続との矛盾は、いたずらに混乱を招きかねない。まずは首相の明確な言葉で国民の理解を求めるべきだ。

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