東芝、半導体子会社売却の舞台裏 二転三転の激しいせめぎ合い、「劇場型買収劇」に

 しかし、返事は一向に来ない。「本当に来るんですか? エビデンス(証拠)がないと取締役会には諮れません」。東芝の綱川智社長に問いただされ、革新機構幹部は「翌朝まで待っていただきたい」と答えるのが精いっぱいだった。

 結局、米カリフォルニア州サンノゼのWD本社から書面が届いたのは、取締役会を数時間後に控えた20日午前4時前のことだった。

 だが、乾坤一擲のこの案を東芝は採用しなかった。WDへの不信感もあるが、東芝関係者は「精査できなかった」と時間切れだったことを明かす。

 「20日の決定は極めて重い。本当にぎりぎりですよ」。主力取引銀行首脳は取締役会を控え、綱川社長にこう伝えていた。日米韓連合と日米連合の間で揺れ動き、結論を先送りしてきた東芝に銀行も我慢の限界だった。

 経営再建中の東芝に融資するのは東芝メモリの売却益をあてにするからだ。主力行は早期決着に向け、訴訟を回避できるWDの陣営を推していたが「どちらでもいいから早く決めてくれ」(銀行幹部)とトーンは変わっていた。9月末の融資枠の更新を控え、銀行団の圧力は強かった。

 「明日、最終案を出せなくなるかもしれない」。日米韓連合内では東芝への最終提案を翌日に控えた7日、騒然となった。

 日米韓連合は8日に買収総額の積み増しといった破格の条件を盛り込む案を東芝に提示し、当時の劣勢を巻き返すつもりだった。だが、前日になって政府筋から待ったがかかった。実は東芝とWDの7日の協議で日米連合への売却が固まる可能性があり、「今さら余計なことをするな」との趣旨の圧力があった。

 「せっかく、まとめ上げた案が幻になるのか」。東芝とWDの協議の報告を待っていた日米韓連合の関係者の耳に夜半になって飛び込んできたのは「決裂した」との一報だった。何とか、日米韓連合の糸はつながり、そこから怒濤(どとう)の逆転劇が始まった。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ