かつてはキワモノ扱いだったが…暑さしのぐ「扇風機付き服」に新規参入続々

【ビジネスの裏側】

 炎天下でも着るだけで涼しく過ごせる「ファン(扇風機)付き作業服」。奇抜なデザインから、かつてはキワモノ扱いの衣料品だったが、熱中症対策に使える作業着として見直され、最近は人気商品となっている。今季は紳士服メーカーなどが新規参入し、アウトドア用として消費が拡大。2020年東京五輪・パラリンピックを控えて、スポーツ観戦向けの需要も見込まれている。(田村慶子)

 ■元ソニー社員、発想の転換で商品化

 ファン付き作業服は、腰部分に取り付けた充電式の小型ファン(扇風機)から衣服内に取り込んだ外気の風で汗を蒸発させ、気化熱が奪われるメカニズムを利用したウエア。平成16年に「空調服」の商標で売り出したのが、商品と同じ名前を社名に冠した「空調服」(東京都板橋区)だ。

 空調服の市ケ谷弘司社長は元ソニーの社員。3年に早期退職し、ディスプレーの画質評価システムなどを設計・開発する会社を立ち上げた。

 空調服のアイデアは、10年ごろに訪れた東南アジアの工場で、「エアコンの電力消費を改善できないか」と思い立ったのがきっかけだったが、空間でなく、「人間だけを冷やす仕組み」に発想を転換したことが、新商品の誕生につながった。

 30年の空調服の生産実績は前年から2倍超となる56万着を記録。今年は130万着とさらに大幅な増産を見込んでいる。

 発売当初は、ユニホーム業界で“キワモノ”と冷ややかにみられていたファン付き作業服。それが見直されたのは、猛暑による熱中症対策が課題になったためだ。

 厚生労働省は、高温多湿下での作業時間の短縮や従業員の塩分・水分摂取、通気性の良い服装を勧めるなどの重点事項を自治体に示し、21年6月から職場における熱中症予防対策を本格化。建設現場を抱える大手ゼネコンを中心に採用が進み、一気に需要が高まった。大林組は27年に「空調服」を採用し、協力会社を対象に割引販売制度を開始。清水建設も28年に「空調服」を導入した。

 ■もはやドレスコード、女性用も

 ライセンスを取得し、昨年から「空調服」の製造・販売に乗り出した作業服メーカーのアイトス(大阪市中央区)は「建設現場でファン付き作業服の着用を義務づけるドレスコード化の動きも出ている」と話す。

今年、同社も昨年比2倍の売り上げを見込む。わきの下から風が抜けることで涼しさとおしゃれ感を兼ね備えたベストタイプを強化。女性用の小さなサイズも投入し、利用の裾野を広げる狙いだ。

 生地を供給する繊維メーカーも反応。機能性素材を武器に冷却効果や快適性を高める付加価値を売り込んでいる。

 東レは遮熱性やUVカット効果のある機能性素材をファン付き作業服用に開発し、今季市場向けに採用された。また、作業服と合わせて肌着の需要も狙う。スポーツ選手が筋肉や関節のサポートに使う「コンプレッションインナー」が、建設作業員にも広まっていることに着目。作業服から出る風が汗臭いとの声に応え、消臭効果も備えた吸湿・接触冷感素材も売り出している。

 ■五輪控えて、観戦需要

 スポーツやレジャー用途へ市場が広がる中、今季も新規参入が相次いでいる。

 紳士服大手のAOKIは今年、公式ウェブサイトや一部店舗でファン付きベスト(1万9800円、税別)の販売を始めた。風量を4段階に切り替えられる仕組みで最大20時間の送風が可能。旅行やスポーツ観戦での利用を狙う。

 デサントは6月初旬からファン付きベスト「空流(くうる)JAC(ジャック)」(4万9千円、税別)の試験販売を東京や名古屋、大阪など百貨店5店舗で開始。既に一部で売り切れも出ている。取り込んだ外気の漏れを抑える帝人の高密度織物を採用。外気による衣服のふくらみを抑えた構造で、見た目のスマートさも追求した。試験販売した店ではゴルフ売り場での反応が良く、広報担当者は「東京五輪・パラリンピックなどスポーツ観戦の需要は大きい」と期待する。

アクセスランキング

もっと見る

ピックアップ