KDDI、スタートアップ支援で5G競争勝ち残り 

 【経済インサイド】

 KDDI(au)が、スタートアップ企業の支援体制を拡充している。昨年9月に都内で開設したビジネス開発支援拠点「デジタルゲート」を今秋に大阪市と那覇市にも設置するほか、米エヌビディアなどとスタートアップの支援で協業することを決めた。来春の第5世代(5G)移動通信システムの商用化を見据え、5GやAI(人工知能)などを融合したリカーリング(循環)型のサービスを創出するスタートアップといち早く連携し、将来の収益源を確保するのが狙いだ。

 「スタートアップと自由なイノベーションを起こすビジョンをつくりたい」

 KDDIの高橋誠社長は6月末に開催した法人向けイベントでこう述べ、スタートアップとの連携に強い意欲を示した。

 連携の核となるのが、東京・虎ノ門にあるデジタルゲートだ。KDDIの強みといえば、通信網やあらゆるモノがインターネットにつながるIoT基盤やデータなど。利用企業は、新規ビジネスの発案から実験までを拠点内で試せるメリットがある。KDDIの取引先の大企業や出資先とのビジネスマッチングや、常駐するKDDI社員による支援などが受けられるのも特長だ。

 高橋氏は「単なるデモスペースではなく、一緒に企業と対話して新しいビジネスモデルを組み立てていく場だ」と強調する。設置からわずか1年足らずで、利用企業は200社以上に達し、早々と拠点の拡充も決めた。

 エヌビディアとの連携では、AIの開発に欠かせない画像処理半導体(GPU)を提供してもらい、スタートアップを開発支援する。デジタルゲートには、エヌビディアのAIエンジニアの派遣も行うという。エヌビディア日本代表兼米国本社副社長の大崎真孝氏は「5GとAIを融合させ、スタートアップによるアプリケーションの開発を支援する」と意気込む。

 さらに、KDDIは日本航空がスタートアップなどと組んで新サービスをつくる拠点「JALイノベーションラボ」とも連携する。来年度の5G商用化に合わせて同ラボなどに5G基地局を設置し、5GやIoTを活用した航空関連の次世代サービスの実用化に乗り出す。日航の西畑智博常務執行役員は「一緒に地に足のついたイノベーションを起こしたい」と語る。

 KDDIがスタートアップとの連携を強化する背景には、5Gの本格的なスタートによって、「あらゆるモノが通信に溶け込み、顧客との関係が再構築される」(高橋氏)とみていることがある。ビジネスモデルが大きく変わりゆく中、スタートアップの発想力や技術力を取り込んで成長につなげる戦略を加速する。

 5Gが普及すると、IoTで集積したデータをAIで分析して、顧客へ新たな価値を提案しやすくなる。これまでの商品の売り切りやサブスクリプション(定額制)モデルから、販売後も継続してサービスを提供して利益を得る「循環型モデル」をいかに生み出せるかが、成長を左右することになる。

 通信業界は、毎月通信料をもらって顧客の要望にあったサービスを提供するなどの循環型モデルを展開してきた。KDDIはこれらのノウハウを外部企業に提供し、新たなサービスの創出を後押ししようとしている。

 こうした企業支援が、自社の通信やIoT基盤を新サービスに生かすプラットフォームサービスや、スタートアップとの有望事業の共同開発に発展する可能性もある。高橋氏は「5Gは通信で収益を上げるのではなく、その上にビジネスを創造して収益を上げる」と構想を説明する。

 KDDIは今年度から3カ年の中期経営計画を発表し、法人向け事業の売上高を令和4(2022)年3月期に平成31年3月期比13%増の1兆円にする目標を打ち出した。

 個人向けの通信事業は携帯電話の値下げ圧力が強いうえ、今秋の楽天の新規参入で競争が激化が予想される。個人向け通信に依存した経営体制からの脱却が課題だ。スタートアップへの支援などを通じ、IoTビジネスといった新たな成長領域の収益をいかに拡大できるかが、持続的な成長の鍵を握っている。(経済本部 万福博之)

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